研究課題/領域番号 |
23240128
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 免疫抑制制御 / エフェクター細胞 / 樹状細胞 / 生体内腫瘍破壊法 |
研究概要 |
本研究では、抗腫瘍免疫応答の制御に重要な各種要素技術の開発・改良を行い、その適切な併用により、効果の期待できる複合的がん免疫療法開発の基盤を構築することを目的としている。本年度は、昨年度に引き続き、複数の分子標的薬(シグナル伝達分子や転写因子の阻害剤)の全身性投与が ヒトがん細胞からの免疫抑制性サイトカインの産生減少作用、あるいは直接的な免疫細胞活性化作用により、担がん生体の免疫抑制病態を改善して抗腫瘍免疫増強作用を示すことを、ヒトがん細胞や免疫細胞とマウス腫瘍モデルを用いて示し、分子標的薬が複合免疫療法における免疫増強剤として有用である可能性を明らかにした。また、がんによる免疫抑制や転移において、CCL2やCCL22などのケモカインが関与すること、その阻害剤が、免疫抑制や転移を抑える可能性を、ヒトがん細胞や免疫細胞とマウス腫瘍モデルで示したので、ケモカインに対する抗体や阻害剤が、複合免疫療法における免疫増強剤として有用である可能性を明らかにした。さらに、TLR刺激活性をもつ新規アジュバントは、ヒト樹状細胞の活性化や抗腫瘍T細胞の誘導促進作用をもち、マウス腫瘍モデルにおける全身性投与により、腫瘍増殖抑制効果を示すことを示し、複合免疫療法におけるアジュバントとして有用である可能性を明らかにした。また、SEREX法で単離したヒトがん精巣腫瘍抗原は、ヒト食道癌患者で免疫原性をもつこと、ヒトがん細胞の増殖・浸潤能に関与して、その発現は食道癌におけるリンパ節転移や予後不良と相関することを見いだしたので、本腫瘍抗原は、食道癌の診断、および複合免疫療法における標的として有用である可能性を明らかにした。 最終年度は、今まで評価してきた要素技術の併用による抗腫瘍免疫誘導と抗腫瘍効果の増強作用を、マウス腫瘍モデルを用いた実験を中心に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した抗腫瘍免疫応答制御の重要ポイントの制御法について、複数の要素技術が有用である可能性を示すことができた。(逆にいくつかの技術は評価したが良い効果が認められなかった。)これにより、次年度の計画である要素技術を組み合わせた複合免疫療法の開発研究を推進することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに 複数の免疫制御の要素技術の評価において、複合免疫療法の開発に有用である可能性を示すことができた。最終年度は、各種要素技術を併用した複合免疫療法の可能性を、マウス腫瘍モデルを主に用いて検討する予定である。その結果に基づいて、臨床試験計画についても考察する予定である。
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