研究課題/領域番号 |
23241002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉川 久幸 (井上 久幸) 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (60344496)
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研究分担者 |
亀山 宗彦 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教 (70510543)
緑川 貴 気象研究所, 地球化学研究部, 部長 (10414517)
村田 昌彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測領域, チームリーダー (60359156)
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キーワード | 海洋酸性化 / 二酸化炭素分圧 / 揮発性有機物(VOC) / 南大洋 / 白鳳丸 / みらい / 炭酸系 / 温暖化 |
研究概要 |
本研究は、南大洋の二酸化炭素(CO2)および揮発性有機分子(volatile organic compounds, VOC)の大気-海洋間交換と、その変動要因(特に生物活動の影響)を解明することを目的としている。CO2は気候変化と海洋酸性化をもたらす原因物質であり、海洋生物への影響が懸念されること、VOCは生物活動により生成し、大気に放出されて大気酸化能やエアロゾルの生成などを通じて気候変化に関与する物質であることから本目的を設定した。南大洋は北極海とともに全世界の海洋に先駆けて酸性化の影響が現れると予想されている。その結果、生物相の変化が生じ、VOCの生成に影響を及ぼすことが考えられる。このことから本研究では南大洋における海洋観測により、(1)海洋表層の酸性化、すなわち炭素循環の実態を把握するとともに、(2)生物活動に伴うVOC放出・生成過程の解明を目指している。平成23年度にはVOC観測装置をまず整備し、「白鳳丸」(海洋研究開発機構)で実証試験を行い良好な観測結果を得た。観測海域はペルー沖から日本までの南北太平洋(2012年1月~2月)であり、広域での観測結果がえられた。また南大洋の110°Eと140°Eに沿って航行した海鷹丸(東京海洋大学)においても海洋二酸化炭素分圧と炭酸系の観測(2011年12月~1月)を行い、現在分析と解析を進めている(海鷹丸 東京帰港は3月)。なお、海洋二酸化炭素分圧とCH4観測に使用するWS-CRDSを用いた計測器(Picarro G2301)を予定通り購入したが、予算執行の制限(当初予算の70%)のため周辺機器の整備に時間を要することになった。この計測器を用いた革新的な二酸化炭素分圧測定装置の開発に向け、海水と気相を気液平衡状態にするためのシャワー式平衡器を新たに設計・製作し、陸上で良好な測定結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、平成23年度は、海洋二酸化炭素分圧(pCO2)とメタン観測(pCH4)に使用するWS-CRDSを用いた計測器(Picarro G2301)を購入し、既存の海洋二酸化炭素分圧測定装置に取り付けることが出来た。また、微量気体成分であるVOCの高精度計測のため、ヘッドスペース-水素炎イオン化検出器ガスクロマトグラフ測定装置を用いて分析することも可能となり、白鳳丸航海において実証試験を済ませることが出来た。pCO2とpCH4観測については既に確立した技術であり、実証試験も今年度「みらい」(海洋研究開発機構)の北極海航海で可能となったので、ほぼ予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、[みらい」(海洋研究開発機構)による南大洋のオーストラリアとインド洋セクターの観測が12月~3月にかけて実施される予定である(MR11-05航海 村田・亀山乗船予定)。この航海においては、開発した機器を用いて海洋二酸化炭素分圧とVOCの連続観測を出航直後から入港直前まで実施する。採水地点では炭酸系・VOC測定のため、各層観測を行う。これまでデータの蓄積がある昭和基地沖での集中観測を予定している。観測では、表層連続観測に加え、南大洋の各層採水地点では表層から深層に至るまで、炭酸系試料以外に栄養塩、溶存酸素、塩分などの分析用海水試料を採取し、船上で分析を実施する。また、南極海と同様に温暖化・酸性化の影響が危惧されている北極海において海洋二酸化炭素分圧と炭酸系の海洋観測を実施する予定であり、当初に計画した以上の成果が期待できる。
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