研究概要 |
平成23年度ではまず、熱分解-キャビティ減衰位相シフト分光法(TD-CAPS法)を用いたTONs自動連続測定システムの構築を行った。TONsの構成成分である有機過硝酸エステル類(PANs)や有機硝酸エステル類(ANs)は加熱することにより熱分解し、NO_2を放出する。この性質を利用して、TONsを熱分解してNO_2に変換し、その後キャビティ減衰位相シフト分光法NO_2モニターでNO_2濃度を測定することによりTONsの濃度を観測する。また、温度の異なったラインを設けることにより、PANsとANsを分けて定量するシステムを構築する。PANsとしてはPAN,PPNを、ANsとしては、硝酸メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、ペンチルについて、熱分解効率およびその温度依存性について調べた。その結果、PANsについては150℃,ANsについては360℃で定量的に熱分解し、NO_2に変換されることが明らかとなった。この結果より、常温、150℃、360℃と温度の異なるライン(それぞれNO_2,PANs,ANsラインとする)を設けることにより、NO_2,PANs,ANsの濃度を個々に定量することが可能であると考えられる。一方、硝酸ガスについても熱分解効率を測定したところ、NO_2,PANsラインでは分解効率は0%であったが、ANsラインでは有意に熱分解し、NO_2を放出することも明らかとなった。この結果をふまえて、ANsラインの前段にNaClを塗布した環状デニューダーを用いた硝酸ガスを除去するシステムを構築した。なお、ANsラインについては使用しているうちに劣化し、分解効率が低下する傾向が見られた。(坂東・定永) 低温濃縮-GC/NICI-MS法によるPANsの多成分同時分析手法を検討し,従来測定されている5種類のPANs(PAN,PPN,PiBN,PnBN,APAN,MPAN)に加え,PANsの可能性が高いと考えられる2つの未同定ピークを検出することができた。また,量子化学計算によりPANのNICI-MSイオン源における挙動を解析し,未同定のPANsのスペクトルを予測する手法を検討した。(板野)
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