研究課題/領域番号 |
23241021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小松 賢志 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80124577)
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研究分担者 |
小林 純也 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (30301302)
加藤 晃弘 京都大学, 放射線生物研究センター, 研究員 (70423051)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NBS1 / RNF20 / クロマチン・リモデリング / RAD18 / 損傷乗り越えDNA合成 |
研究概要 |
ナイミーヘン症候群は染色体不安定性、放射線高感受性と高発がん性を特徴とするヒト劣性遺伝病である。その蛋白NBS1はC末側に存在するATMおよびMRE11との結合領域により、放射線照射後のATM依存性チェックポイントならびにMRE11依存性相同組み換え修復を制御することが既に知られている。我々はNBS1のC末側にはさらにユビキチンリガーゼRNF20およびRAD18と結合する領域が存在することを最近明らかにした。本年度の研究では、NBS1とRNF20の結合は転写やDNA複製阻害剤の添加により影響を受けず、放射線照射にのみ依存することが示された。また、この結合はRAD51のような相同組み換え蛋白のDNA損傷部位への集積に必須であるが、クロマチン構造を弛緩させる薬剤処理により代替できた。一方、RNF20と結合する蛋白として新たにヒストンシャペロンを同定して、そのノックダウンと結合領域の変異蛋白から、RNF20を経由したクロマチン構造の弛緩とそれに続く相同組み換え修復の制御機構の存在が明らかになった。次に、RAD18結合ドメインを欠損したNBS1の欠失変異体を用いて、その役割を解析した結果、NBS1/RAD18の結合は紫外線のみならず、アルコール摂取により発生するアセトアルデヒドやその他のアルキル化剤にも高感受性を示した。RAD18欠失変異体ではレポーター遺伝子を用いた相同組み換えの測定により、これらのDNA損傷の修復には相同組み換え修復に加えてRAD18依存性の損傷乗り越えDNA合成が重要な役割を果たしていることが判明した。一方、Flag標識NBS1に免疫共沈する蛋白をマススペクトル法により同定した結果、幾つかの関連蛋白との新規結合が明らかとなった。このうちの1つの蛋白はNBS1の新規保存領域で結合して、損傷乗り越えDNA合成の開始に重要な役割を担うことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画を上回るスピードで順調に進んでいる。例えば、RAD18とNBS1の結合そしてそのDNA損傷応答機構を明らかにして論文公表した(Molecular Cell, 43:788-97, 2011)。また、RNF20とヒストンシャペロンの結合の放射線応答における役割を明らかにして現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
RPAがRAD18依存性損傷乗り越えDNA合成に重要であることが既にUlrich HDのグループにより報告されていた(Molecular Cell, 29:625-636, 2008)。しかし、本研究の解析ではRPAがこの開始機構に直接かかわらないことが判明した(つまり、Ulrich HD等の論文では重要な点が欠落していると思われる)。代わりにマススペクトルを用いた実験によりNBS1と他の蛋白との結合が重要であることが明らかになった。そこでRPA結合の解析に代えて、この蛋白とNBS1との結合による開始機構の全容解明を進める予定である。
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