研究課題
放射線感受性遺伝病の蛋白として同定されたNBS1は、そのC末側に高等真核生物で良く保存された5領域が存在する。このうち2領域はATMおよびMRE11と結合してそれぞれ細胞周期チェックポイントと相同組換え修復を制御する事が既に報告されている。我々の最新の研究から残りの2保存領域に結合する蛋白はユビキチンE3リガーゼのRAD18およびRNF20である事が明らかになった。そこで、本研究はこれらのユビキチン化酵素のDNA二重鎖切断における役割を明らかにし、さらに残された5番目の領域の結合蛋白とその機能を明らかにすることを目的とする。RAD18結合ドメインを欠損したNbs1欠損細胞は放射線にわずかに感受性となる。その程度は相同組換え修復の欠損細胞と類似しているので、DR-GFPレポーター遺伝子を用いて相同組換え能をアッセイしたが異常は見られなかった。しかし、EdUを用いて放射線照射後の修復合成を測定した結果、顕著に低下していた。放射線はDNA二重鎖切断以外にも数多くの塩基損傷を誘発するので、修復合成における損傷乗り越えにこのRAD18ドメインが必要であると思われる。一方、DNA-クロマチン構造はまるで呼吸するかのように、緩んだり、堅くなったりすることが知られている。ヒストンシャペロンFACTは緩んだクロマチンをより安定にする作用がある。DNA二重鎖切断に構造を緩めて、FACTが損傷部位に多く結合、そしてRNF20をリクルートすることが明らかとなった。このようにNBS1と結合するRAD18およびRNF20の解析から、損傷応答の新しい概念が導かれた。さらに、5番目のドメインは放射線アポトーシスに関わることが明らかとなり、NBS1の修復、チェックポイント、クロマチン・リモデリング、アポトーシス、損傷乗り越え合成から構成される損傷応答機構の全体象が鮮明となった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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