研究課題/領域番号 |
23241025
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 次雄 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90091694)
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研究分担者 |
殷 しゅう 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40271994)
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キーワード | 赤外線遮蔽材料 / タングステン酸セシウム / ソルボサーマル反応 / 導電性 / 省エネルギー / インジウム代替材料 / 酸化亜鉛 / スマートウィンドウ |
研究概要 |
CsOHとWCl_6のを種々のアルコール溶液に溶解した後、200℃付近の温度域で加熱することで、Cs_<0.33>WO_3ナノ粒子を合成した。反応率および生成物の形態はアルコールの種類や添加剤により変化し、特に酢酸の添加により著しく促進された。反応終了後の溶媒の化学分析によりエーテルおよびエステルの生成が確認されたことから、アルコールの脱水縮合およびアルコールと酢酸のエステル化反応により生成される水が反応の進行に重要な役割を示すことが明らかとなった。溶媒としてエタノール-酢酸混合溶液を用い、反応条件を最適化することで光散乱が少ない粒径20nm以下のCs_<0.33>WO_3ナノ粒子を合成できた。エタノール-酢酸混合溶液中で生成されたCs_<0.33>WO_3ナノ粒子は水中に高分散できたことから、粒子表面に吸着された酢酸イオンに起因する静電反発によりナノ粒子の凝集が抑制されていることがわかった。得られた試料よりドクターブレード法により優れた可視光透明性と赤外線遮蔽能を示すCs_<0.33>WO_3薄膜を作成することができた。なお、赤外線遮蔽は赤外線の吸収と赤外線の反射により生ずるが、Cs_<0.33>WO_3薄膜では、光散乱が少なく、赤外線遮蔽はCs_<0.33>WO_3薄膜による赤外線吸収に起因することが明らかとなった。また、石英ガラス基板にCs_<0.33>WO_3薄膜を形成させたものを箱上に設置し、ハロゲンランプの光を照射した時の箱内の温度変化を測定し、Cs_<0.33>WO_3薄膜無塗布ガラスやITOガラスと比較し、箱内の温度上昇が少なく、夏場の欄照射による温度上昇を抑えるスマートウィンドウ等への応用が可能であることを実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タングステン酸セシウムナノ粒子の合成条件を明らかにし、優れた可視光透明性と赤外線遮蔽能を示すタングステン酸セシウム薄膜を形成できたことから、当初の研究計画を概ね達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
アルカリ源として高価なセシウムを安価なナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム等に置換した安価なタングステンブロンズナノ粒子の合成と赤外線遮蔽特性について検討する。また、タングステンブロンズ以外の導電性ナノ粒子の合成についても検討し、安価な熱線遮蔽材料の開発を図る。
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