研究課題/領域番号 |
23241027
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川添 良幸 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30091672)
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研究分担者 |
水関 博志 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00271966)
BELOSLUDOV Rodion 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10396517)
佐原 亮二 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30323075)
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キーワード | 第一原理計算 / 時間依存DFT計算 / 水素貯蔵材料 / グラフェン / ナノチューブ / Al(111)表面 / van der Waals力 / スピルオーバー過程 |
研究概要 |
本研究の大きな目的は第一原理計算を用いた新規ガス貯蔵材料の貯蔵能解析と探索である。本報告では、ナノスケール構造体を用いた水素貯蔵材料の貯蔵能、放出過程、貯蔵過程の計算結果を中心に述べる。 第一原理計算を用いて、ボラン分子を付加した大きな半径を持つシングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)は水素貯蔵能を有することを示した。さらに、水素分子1個当たりの平均吸着エネルギー0.21eVは可逆的な吸蔵・放出を実現する上で最適な値であった。グラフェン、フラーレンなどの他の炭素系ナノ構造体でもボラン分子をドーピング可能であり、水素分子を貯蔵できる。これらの系統的な計算結果はカーボン系材料表面の曲率に依存した相互作用の存在を示していた。 第一原理計算結果に基づき、ナノチューブの垂直方向に外部電場を与えることで、シングルウォールカーボンナノチューブに化学吸着した水素原子を取り出す新しい方法を提案した。外部電場を強く印加するに伴い、カーボンナノチューブの大きな曲率にあるC-H結合の距離は伸びていく様子が見られた。電場の方向に沿って内径が伸びるようにナノチューブは圧縮され、結果として、曲率の大きなサイトから水素原子が放出されることが明らかになった。 第一原理計算により、清浄なAl(111)表面および遷移金属原子を置いたAl(111)表面での水素分子の解離過程を調べた。この解析から、触媒効果と遷移金属の3d軌道を通した電子授受の関係を明らかにした。さらに、部分酸化させたAl(111)表面での水素分子を含む系における還元過程の有無を調べるために、表面の還元過程での原子の拡散経路をCI-NEB法を用いて解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題で開発したTDDFT計算プログラムにより水素貯蔵材料表面での水素分子のスピルオーバー過程を追跡出来るようになり、優れた水素貯蔵能を有する材料探索に活用することが可能になった。今後は多様なガス貯蔵材料に適用する。
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今後の研究の推進方策 |
ガス貯蔵材料として利用する有機金属構造体(MOF)の効率的な設計方法を開発するために、超並列計算機上で並列化を向上させた高精度第一原理計算プログラムを開発する。このプログラムコードを活用して新規ガス貯蔵材料の探索と評価を進める。水素貯蔵用の高性能なMOF構造を設計する事を目的として、コネクターとリンカーの組み合わせで作られる多様なトポロジーを持つ最適な分子ビルディングブロックの探索を行う。
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