研究課題
1.ウリ科植物由来のPOPs吸収に関わる根滲出物の探索・同定a. ウリ科植物を栽培した水耕液に含まれる根滲出物の同定水耕栽培したCucurbita pepo(ペポカボチャ)の水耕液を濃縮した後、この濃縮液を脂溶性蛍光物質であるペリレンを吸着させた土壌に添加した。その結果、ウリ科植物の水耕液はそのダイオキシン類の蓄積性能に関わらずペリレンを可溶化する活性を持っていることが判明した。そこで、この濃縮液を高速液体クロマトグラフィーに供することにより、それに含まれる脂溶性物質可溶化活性を持つ物質を同定することを試みた。複数のピークが検出されたものの、可溶化活性の本体となる物質の同定にはいたらなかった。2.ウリ科植物由来のPOPs体内移行に関わる導管液成分の探索・同定a. ウリ科植物の導管液に含まれる成分の同定C. pepo9品種の導管液を用いて脂溶性物質の可溶化活性を測定したところ、ダイオキシン類の蓄積性能に相関して増加した。また、熱処理によりその活性は失われたことからタンパク質によるものと考えられた。そこで、導管液をSDS-PAGEに供したところ、17kDa付近にダイオキシン類の高蓄積性能に相関して増加するタンパク質が検出された。このタンパク質のアミノ酸配列の一部を決定したところ、Major latex-like protein(MLP)の一種であることが判明した。このタンパク質の遺伝子をクローニングし、大腸菌に異種発現し、MLPの脂溶性物質への結合活性を測定したところ、ポリ塩化ビフェニルに対して結合活性を有していることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
1.ウリ科植物由来のPOPs吸収に関わる根滲出物の探索・同定脂溶性物質を可溶化する活性を持つ物質の同定には至っていないものの、可溶化活性測定方法の確立やウリ科植物の水耕液に可溶化活性があることを見いだしていることから、今後標的とする物質の同定が期待できる。2.ウリ科植物由来のPOPs体内移行に関わる導管液成分の探索・同定POPsの体内移行に関わる導管液成分としてMLPを世界で初めて同定することができた。C. pepo植物がダイオキシン類を高濃度に蓄積する原因物質の候補として有望であり、今後の研究の発展が期待できる。
1.ウリ科植物由来のPOPs吸収に関わる根滲出物の探索・同定b. 根滲出物生合成・分泌関連遺伝子の単離・・・同定した根滲出物の生合成及び根からの分泌に関連する遺伝子を文献調査し、それぞれに対応するプライマーを合成して、RT-PCR法によりcDNAを取得する。また、次世代シークエンス技術を用いて網羅的に関連遺伝子の同定を試みる。2.ウリ科植物由来のPOPs体内移行に関わる導管液成分の探索・同定b. 導管液成分生合成・分泌関連遺伝子の単離・・・同定した導管液成分の遺伝子やその生合成、導管への分泌に関わる遺伝子をそのアミノ酸配列や文献情報によりプライマーを合成し、RT-PCR法により単離する。また、次世代シークエンス技術を用いて網羅的に関連遺伝子を単離する。c. 同定した導管液成分のPOPs吸収に与える影響評価・・・同定した導管液成分がダイオキシン汚染土壌で栽培した植物のダイオキシン取り込み効率を上げることができるか調べるために、精製した導管液成分をダイオキシン汚染土壌で栽培しているズッキーニ低蓄積品種に添加し、地上部に蓄積したダイオキシンを定量する。
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