研究概要 |
増殖速度が遅くて,バイオリアクター内に保持することが困難な難培養微生物を高濃度に培養できれば,これまで不可能と思われている環境技術の創生が可能となる。下水の嫌気性処理(UASB法)の後段処理として開発されたDHS(Down-flow Hanging Sponge)リアクターは,保持微生物の高濃度化が可能であり,汚泥滞留時間が途轍もなく長い。このDHSリアクターを用いることで,エアレーションを要さない省エネ・低コストで,リン等の資源回収や特殊な排水処理等への適用拡大が想起され,本研究はこれら新規の環境技術を確立することを目的としている。本年度は各開発技術に対して次の知見を得た。 1)溶存メタンの回収:硫酸塩濃度の高い下水の嫌気性処理水ではメタンの生成量が少ないが,メタンが溶存している。DHSリアクターを用いた後段処理において,この溶存メタンの大気放散を防止できることが明らかになった。 2)低pH硝化:DHSリアクターを用いて好酸性の硝化菌の培養に成功した。好酸性硝化群集の菌叢解析を実施し,アンモニア酸化は古細菌が担っていることを明らかにした。 3)温室効果ガス・亜酸化窒素とメタン同時分解:メタンを資化して亜酸化窒素を還元するメタン脱窒菌をDHSリアクターで培養を試みたが,本反応は確認できるも増殖が見られず,反応を担っている細菌を同定するまでには至らなかった。 4)富栄養化湖,河川からのリンの回収:低濃度リン水に対してもDHSリアクター内にポリリン蓄積細菌を高濃度に生息させて,溶液中のリンを高濃度リン含有液として回収できることを確認した。 5)亜硝酸化とアナモックスの同時反応窒素除去:一槽のDHSリアクターでの亜硝酸型硝化/Anammox型窒素除去が可能であるが,その処理性能を高めるためには,酸素濃度の検討がさらに必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りの実験が実施できており,目的の結果をほぼ得ている。ただし,亜酸化窒素とメタンの同時分解細菌については,増殖速度が遅いと考えられ,集積培養には時間を要するため,来年度も継続して培養を行う。
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今後の研究の推進方策 |
難培養微生物をDHSリアクターを用いて如何に培養するかが,本研究の本質であり,今後も継続して培養を実施する。従って,研究計画に変更はなく,遂行する上の問題は特にない。
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