今後の研究の推進方策 |
ゲストを内包した開口フラーレンの開口部をゲストを内包したままで縮小する。一旦、活性化学種がフラーレン内部に捕捉されれば、安定に取り扱いができるものと期待する。最後に、残存する有機基を除去し、内包 C60 の合成を行う。得られた化合物の単結晶を育成し、誘電率の温度変化を測定し、内包化学種の動的挙動との相関を明らかにする。特に、酸素分子内包体においては、光照射による励起一重項酸素の発生とその緩和過程の解明に取り組む。また、鉄原子内包体では磁性に興味が持たれる。 申請者らは既に、開口部への硫黄挿入とフラーレン骨格の減炭素反応により、C59S ならびに C69S の開口体の合成を報告している。そこで、これらの開口部を修復し、これまでに達成例の無いチアフラーレン C59S, C69S を合成する。このチアフラーレンにおいては、分極した硫黄イリド構造の寄与が予想できるため、結晶状態での分子配列を明らかにし、電荷移動特性を評価する。また、他のヘテロ元素 (B, O, Si, Ge, Sn, P, Se, Te) を開口部に組み込むことにも取り組む。特に、ホウ素活性種との反応を検討したい。開口部の修復がうまく行かない場合には、開口部にかさ高い置換基を導入して室温における内包化学種の放出を抑制し、その内包体の物性評価を行う。
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