研究課題/領域番号 |
23241036
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
齋藤 晃 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (50292280)
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研究分担者 |
田中 信夫 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (40126876)
吉田 健太 (財)ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 博士研究員 (10581118)
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キーワード | 電子顕微鏡 / 電子らせん波 / 軌道角運動量 / 円二色性 / キラリティー |
研究概要 |
1.電子らせん波の生成 ホログラフィの原理にもといて種々の電子らせん波を生成する絞りをデザインし、FIBをもちいて各絞りの作製を行った。作製した絞りを透過電子顕微鏡の収束レンズ絞り位置および試料位置に挿入し、絞りを通り抜けた電子線の伝播過程を観察した。今年度は、1)トポロジカルチャージが10のスパイラルゾーンプレートによる軌道角運動量90hのらせん波の生成(論文掲載済み)、2)らせん波を生成する回折格子を2つ含むマスクをもちいたらせん波のヤング干渉実験、3)2つのフォーク状入り回折格子、4)バイナリマスクのスリット幅と回折波の消滅則の関係、5)ホログラフィの原理にもとづき絞り形状をデザインするプログラムおよび任意の形状の絞りを透過した電子波の伝播シミュレーションプログラムの開発、6)分数軌道角運動量をもつらせん波生成のシミュレーション、7)準周期回折格子をもちいたらせん波生成のシミュレーション、を行った。また装置開発としては、電子顕微鏡に2つ目の収束レンズ絞りを装着するための装置および制限視野絞り位置に2つ目の絞りを導入するための装置を開発し、搭載した。 2.円二色性イメージング 軌道角運動量の符号が互いに反対のらせん波を強磁性体であるFe薄膜試料に照射し、EELSにみられるFeのL殻励起スペクトルに差異がみられるか観察を行った。本研究課題では、アントワープのグループが報告しているようなL23ピーク強度比の変化(EMCD)はまだ観察されていない。電子らせん波による左右掌性結晶の判別の可能性を検証するために、らせん波を入射波としたマルチスライス計算プログラムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究課題を開始してから、当初予定していなかったスパイラルゾーンプレートという新しいタイプの絞り形状の可能性に気づき、その計算および検証実験を行った結果、軌道角運動量90hのらせん波を得ることに成功し、論文発表まですすめることができた。また、当初平成24年度に予定していた伝播シミュレーションの一部は既に完了している。ただし、これらの実験および計算のため、当初予定していたEMCDの実験の開始が遅れており、アントワープのグループの結果がまだ検証できてない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
「円二色性イメージング」の研究課題が当初の計画より遅れているが、「電子らせん波生成」の研究課題は計画より前倒し進んでおり、またいくつかの新しい知見が得られている。平成24年度は、遅れている円二色性イメージングの最初の課題である検証実験にまず取りかかる。このテーマを担当している研究スタッフおよび大学院生の実験スキルが向上している段階であり、今後研究のスピードが向上すると期待される。
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