研究課題/領域番号 |
23241038
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江島 丈雄 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80261478)
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研究分担者 |
柳原 美廣 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40174552)
加道 雅孝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30360431)
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キーワード | 軟X線顕微鏡 / 水の窓 / 炭素の窓 / 密着法 |
研究概要 |
研究目的を達成するため、今年度は評価実験2つと開発を行った。実験(1)では、シンチレータを用いた「生きた」細胞の密着保持方法の確立と最適観察のための含水層の厚さの探索、実験(2)では、完成した顕微鏡と試料セルを用いて、「生きた」細胞観察のための観察条件の探索を行い、開発(1)では、密着型軟X線顕微鏡のための可視読み出し光学系の設計・製作を行った。 このうち実験(1)では、開発(1)で開発した試料セルによる密着した細胞周辺の含水層厚さの制御法の開発と、観察する細胞ごとの観察波長探索を行った。マウス精巣ライディッヒ細胞を観察対象として、軟X線の波長を水を最もよく透過する2.0nmから4.8nmまで0.01nmずつ振って、その透過像を得た。得られた像は、細胞の厚さ、細胞を構成するオルガネラ、波長によって異なり、特に水層の厚さによって、全体の像のコントラストが大きく異なった。行った実験結果から、もっとも高い軟X線像のコントラストを与える層の厚さはおおよそ数μmが最適であることが分かった。また、過度の軟X線照射は、細胞に対して強いダメージを与えることも明らかとなった。続いて、細胞小器官の軟X線像を同定するための蛍光像と軟X線像の比較を行った。実験は、軟X線像を得たのち、観察した試料に蛍光剤を付加し、蛍光像を得た。得られた結果は現在解析中であるが、おおよその軟X線像と蛍光像の相関が得られた。 開発(1)では、新たに、細胞試料の透過軟X線を密着させたシンチレータで可視光に変換し、変換された可視像を読み出し記録する光学系の設計・製作を行った。評価の結果、おおよそ空間分解能は0.7μm、視野200μm×200μm、露光時間1秒(最短)で、像が得られることが明らかとなった。一方で、細胞に対して軟X線を当て続けると細胞を破壊されるため、照射時間を短くするための設計変更を行う必要が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した実験を行い、概ね予想された結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞のダメージを減らすために撮像時以外の露光を避けるため、CCDと運動したシャッターを導入する。また、軟X線の露光時間を減らしても細胞にダメージがあるか調べた上で、ダメージがある場合には、ダメージの軽減を図るため試料の冷却方法を検討する。
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