研究課題/領域番号 |
23241039
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
京谷 隆 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90153238)
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研究分担者 |
干川 康人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90527839)
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キーワード | ナノカーボン / ナノ空間 / DNA / バイオマテリアル |
研究概要 |
鋳型炭素法によって作製されるカーボンナノ試験管(CNTTs)には、その径と長さをナノメータレベルで精密に制御できるだけでなく、内外表面を区別して化学修飾できるという特徴があり、しかも水分散性が極めて高い。生体分子をCNTTsの閉じたナノ空間に閉じ込めることで、外部からの影響を受けないナノ輸送担体としての利用が可能になる。本年度は内径25nmのCNTTsナノ空間内への種々の核酸の内包と細胞導入を目的とした外部表面の機能化を検討した。 ■カーボンナノ空間内への種々の核酸導入 塩基配列、塩基数、高次構造の異なる3種類の核酸25μ/mL(チミンオリゴマー(T20:20塩基)、メッセンジャーRNA(mRNA:1725塩基)、プラスミドDNA(pDNA:7000塩基対))のCNTTsへの導入を行った。塩化カルシウムを含むT20、mRNA、pDNA各水溶液中の含まれる核酸は、30μgのCNTTsにそれぞれ18wt%、41wt%、63wt%が取り込まれた。これらの核酸の導入量はCNTTs分散後5分以内に平衡に達したことから、CNTTsは核酸に対して極めて高い吸着能があることが分かった。 T20はpDNA及びmRNAよりも小さいにも関わらずCNTTs内への導入量はmRNAやpDNAよりも少ないことから、カーボンナノ空間内への核酸の内包は、サイズではなくその塩基配列や高次構造の影響も示唆される。また、CNTTsはそのナノ空間内に遺伝子干渉に用いられるオリゴマーから遺伝子発現に用いられるmRNA、pDNAまで、広範囲の核酸を導入できることが示された。 ■外部表面修飾によるCNTTsの機能化 CNTTsは外部表面に多数のカルボキシル基を有していることから水分散性を持つが、生体液中には多数のカチオン(Na^+、K^+、Ca^<2+>、Mg^<2+>など)が存在するため、アニオン性であるCNTTs(ζ電位:-28mV)は塩析によって凝集しやすい。そこで、CNTTs外表面のカルボキシル基に細胞膜透過性を持つ塩基性アミノ酸ペプチドであるアルギニン8量体の修飾を行った。アルギニン8量体修飾後のCNTTsのζ電位は+18mVとなり、表面がカチオン性に変わったことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造の異なる種々の核酸のカーボンナノ試験管への導入挙動が明らかになり、遺伝子発現のための核酸輸送ナノカプセルとしての応用までの道筋が見えてきたため。
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今後の研究の推進方策 |
カーボンナノ試験管のナノ空間内に導入した核酸を細胞内に輸送し、遺伝子発現を試みる。 (1)(外表面の機能化)細胞膜透過性のペプチドを修飾することで、細胞内に透過しやすいカーボンナノ試験管の作製し、細胞試験による検証を行う。 (2)(核酸の遺伝子発現)核酸を内包したカーボンナノ試験管を細胞内に導入し、遺伝子発現を試みる。 また、酸化還元酵素やアミロイドペプチドなどの生体分子をカーボンナノ空間に導入することで、酵素電極その他のナノバイオ材料への展開も模索していく。
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