研究課題/領域番号 |
23241039
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
京谷 隆 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90153238)
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研究分担者 |
干川 康人 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90527839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ材料 / ナノチューブ・フラーレン / ナノバイオ / 炭素 / 薬物輸送 / 酵素電極 |
研究概要 |
酵素や遺伝子などの生体分子をカーボンのナノ空間内に閉じ込めることで、マクロでは見せない特性を引き出したナノバイオ材料の開発を行った。 ①水分散性カーボンナノ試験管の表面機能化:表面酸化処理や熱処理及び有機分子のポスト修飾により、内外表面の特性(表面親水化、疎水化、エチレンジアミン及びアルギニンなどの有機分子修飾)を選択的に制御したカーボンナノ試験管の作製に成功した。このようなカーボンの内表面の性質は核酸や酵素の導入挙動に大きく影響することを明らかにした。例として、内表面のみを親水化したカーボンナノ試験管は、疎水的なカーボン表面のものよりも多くの核酸が導入できることが分かった。 ②カーボンナノ試験管による核酸の保護効果:効率的な遺伝子輸送を行うためには、生体内における輸送時に分解酵素の影響を避けるのが望ましい。カーボンナノ試験管に入れたプラスミドDNAを制限酵素水溶液中に曝したところ、分子鎖の切断は確認されず、構造が守られていたことが示された。すなわち、カーボンナノ試験管は外部環境からの影響から生体分子を守るナノ容器として有効であり、生体内における薬物輸送担体としての応用が期待できる。 ③カーボンナノチャネル内への酸化還元酵素の導入と酵素電極の作製:直径40 nmのカーボンのナノチャネルを持つ炭素被覆アルミニウム陽極酸化(CAAO)膜を作製し、電気泳動法により帯電した酸化還元酵素(フルクトースデヒドロゲナーゼ)を内包した。D-フルクトースを酸化して電流値を得たことから、酵素担持したCAAO膜は酵素電極として作用することを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度ではカーボンナノ空間内に閉じ込めた生体分子を用いたナノバイオ材料ととしての応用を検討した。水分散性カーボンナノ試験管が分解酵素などによる外部環境の影響から生体分子を守る薬物輸送用の「ナノ容器」として有効であることを明らかにすることができた。同時にカーボンナノ試験管を用いた生体環境下での輸送担体としての機能性の付与についても検討は進んでおり、今後の生体環境下(細胞試験や動物試験)における調査に向けて前進している。加えて、ナノチャネルを持つ炭素被覆アルミナ膜へ酵素を固定化することで酵素電極の作製に成功したことから、機能性ナノバイオ応用材料の創製については大きな進展が見られた。 これらの理由により、本研究は当初の計画目標をおおむね達成し、更に本研究の最終目的である生体分子の挙動の解明とナノバイオ材料への応用に大きく近づいていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、特定の生体分子と選択的に相互作用するカーボン内表面を設計することで、生体分子をカーボンナノ空間に固定化する方法を確立し、毒性蛋白質の吸着や薬物輸送などの医療分野への応用や酵素電極などのナノバイオハイブリッド材料の開発を進める。 ①カーボンナノ試験管へのアミロイドβの吸着及び線維化抑制:アミロイド病の一つであるアルツハイマー病は生体内におけるアミロイドβの線維化が原因とされている。本テーマでは、カーボンナノ試験管の内表面にアミロイドβと相互作用しやすい表面修飾を施すことで蛋白質を内部に固定化し、線維化の抑制を試みる。 ②カーボンナノ試験管内に導入した薬剤の徐放特性の評価:生体内での薬剤の放出量を時間的に制御することで、薬剤投入量の最小化や長期に渡る効能などが期待できる。本テーマではカーボンナノ試験管内表面の改質することで薬剤モデル物質を内包し、生体内における効果的な放出量制御を検討する。 ③酸化還元酵素の固定化による酵素電極の作製:多孔質導電体に酸化還元酵素を大量に吸着させることで、高感度なバイオセンサーとなる酵素電極が作製できる。本テーマでは、カーボンナノ空間内の内表面を制御した垂直配向ナノチャネルを持つ炭素被覆アルミニウム陽極酸化膜を作製し、大量の酸化還元酵素の固定化を行い、更に反応物質の物質移動に適したナノチャネル構造を設計することで、高性能酵素電極の開発を行う。
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