研究課題
本研究では、ナノレベルで精密に制御されたカーボンナノ空間における生体分子の挙動を解明すると共に、マクロ空間では引き出せない生体分子の特長を活かしたナノバイオ機能材料の開発を行うことを目的としている。これまでに炭素被覆アルミニウム陽極酸化皮膜のカーボンナノチャネル内に酸化還元酵素を固定化することでバイオ燃料電池用のための酵素電極を作製した。しかしながら、酵素がナノ空間内でどのように固定化され、また電極性能にどのような影響を及ぼすかについてはよく分かっていない。そこで本年度では、電子受容体であるT1銅サイトと、酸素の還元部位であるT2-T3銅クラスターを持つラッカーゼのカーボンナノ空間内での配向制御を試みた。酵素の立体構造解析モデルから、ラッカーゼはT1銅サイトとT2-T3銅クラスターは互いに反対方向の面に位置していることが判明した。また、T1銅サイト周辺はT2-T3銅クラスターに比べて比較的疎水性のアミノ酸が多く存在し、更にT2-T3銅クラスター側は塩基性アミノ酸がT1銅サイト側よりもより多く存在することが分かった。ここでラッカーゼのアミノ酸が正に帯電し(pHを等電点以上)、かつ炭素表面を正に帯電させることで、T2-T3銅クラスターを炭素表面との静電反発を引き起こし、逆にT1銅サイト側を疎水的相互作用により近づきやすくなるような条件で固定化を行った。様々な固定化条件から作製した酵素電極の電気化学測定結果を比較すると、上記条件で固定化した電極は、正反対の固定化条件のものと比較して2倍近くの高い電流密度を示した。これは、T1銅サイトが炭素表面側に配置されたことで炭素からの電子伝達が円滑に進み、更にT2-T3銅クラスターが外側に配置させることで酸素の還元反応も進みやすい最適な固定化条件が実現したためと考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Carbon
巻: 80 ページ: 135-145
doi:10.1016/j.carbon.2014.08.048
http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/kyotani/