研究課題/領域番号 |
23241041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鷲津 正夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10201162)
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研究分担者 |
オケヨ ケネディオモンディ 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10634652)
小寺 秀俊 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252471)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 細胞融合 / バイオテクノロジー / マイクロアレイ / 再生医療 / バイオナノテクノロジー / 自己形成メニスカス / 細胞質移植 |
研究概要 |
本研究は,申請者らが開発したマイクロデバイスを用いた高収率電気細胞融合法を用いて,融合後の融合細胞の個々の細胞の挙動を経時的に観察し,細胞融合に関する生物学的知見を得るとともに,マイクロメートルスケールのオリフィスを核の融合を阻害する隔壁 として利用することにより遺伝情報の混合を伴わない細胞融合・細胞質移植等の新しい手法を開発し,これらを用いた細胞の機能制御の方法とその再生医療への展開を探求することを目的として推進している。平成24年度においては,外来遺伝子による汚染なしに細胞初期化を行う手段として,核が通り抜けられないくらい小さいオリフィスをはさんでES細胞と体細胞をオリフィスをはさんで融合し,ES細胞の持つ因子により,体細胞の初期化を行う方法に関する研究を行った。その過程において,ナロウイングスリットと呼ばれる新規な構造の作法を開発した。これは,次第に狭くなるスリット構造を3次元リソグラフィー技術によって製作するもので,広いところで高収率な融合を行い,狭いところで融合細胞間の膜融合状態を保ったまま,かつ核が融合しないように培養することが可能になる。 本年度は,この細胞融合の大量並列性の応用として,B細胞とミエローマとの融合による抗体産生を試みた。本法は,高収率で必ず1:1での融合が可能であり,1:1のヘテロカリオン(4n)は,多数:多数(6n以上)に比べて高い生存率が期待できる。実際,2000個のオリフィスから,100個程度のコロニーが得られた。これは数%の収率に相当し,従来法の0.1%程度を大きく上回り,リンパ節からのモノクローナル抗体作製を可能にする数字である。来年度は,研究室に継代されていたES細胞の問題により,今年度に進まなかった,遺伝子混合をともなわない融合を用いた細胞初期化をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究においては,マイクロオリフィスを用いて,高い収率での1:1の細胞融合が再現性良く実現できるようになった。また,遺伝子の混合を伴わずに細胞質の交換を行うために,3次元リソグラフィー技術によって製作するナロウイングスリットと呼ばれる新しい構造を製作することにより,広いところで高収率な融合を行い,遠心により狭い方へと融合細胞を落とし込み,狭いところで融合細胞間の膜融合状態を保ったまま,かつ核が融合しないように培養するシステムを開発し,これを用いてES細胞と体細胞の融合により,体細胞の初期化をめざしたが,研究室に継代されていたES細胞の問題により,初期化自体を観察するには至らなかった。しかしながら,これと平行して行っていた,マイクロオリフィスを用いたB細胞とミエローマとの融合による抗体産生においては,従来法の数十倍の収率を実現し,リンパ節からのモノクローナル抗体作製への道が開けた。
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今後の研究の推進方策 |
ES細胞と体細胞の1:1融合により,核を分離したまま培養を行い,体細胞の初期化の経時観察を試みた。しかしながら,体細胞の初期化は明確には観察されなかった。両細胞の間で,初期化因子と分化因子の相克があり,初期化が負けていることが予想されるので,多数のES細胞と1個の体細胞を融合することにより,初期化因子の量を増やして,初期化を試みた。しかしながら,やはり初期化は観察されなかった。研究室で継代されていたES細胞の劣化が問題と思われるので,来年度は新しい株を用いて初期化を試みる。さらに,抗体産生のプロセスについて1細胞レベルでの観察を行い,ヘテロカリオンの形成・生存・分裂・遺伝子脱落等の機構の解明を行う予定である。
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