研究課題/領域番号 |
23241046
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
山口 浩司 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 部長 (60374071)
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研究分担者 |
岡本 創 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 研究主任 (20350465)
小野満 恒二 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, 研究主任 (30350466)
マブーブ イムラン 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子電子物性研究部, リサーチスペシャリスト (80417097)
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キーワード | 電子デバイス / 集積回路 / 新規デバイス / マイクロ / ナノマシン |
研究概要 |
これまで研究を進めてきたパラメトリック周波数変換を用いたナノ機械ロジックの手法における課題点として、機械構造の応答速度の問題があった。今年度、この点を改善するために重要な二つの成果を得た。 第一の成果は、異なる振動モードを用いることによるバンド幅の改善である。これまでの同一モード内における周波数変換のみならず、異なる振動モード間における周波数変換を実現し、周波数分解に要する時間を大幅に改善するための基盤技術を得た。本成果はPhysical Review Bに採択された。さらに、この周波数変換の効率を大幅に改善し、異なる振動モード間の強結合を実現することに成功した。この手法により、ナノ機械ロジックのみならず他の様々なナノ機械構造の応用において重要視されている機械構造間の結合動作を、複数の構造を作り込むことなしに実現できる。本成果は量子光学分野における電磁誘導透明化(EIT)を機械構造で実現したことに相当する。この成果はNature Physics誌に掲載された。 応答速度に関する第二の成果は、量子計算に用いられているπパルス制御と同様の手法を用いることにより、機械構造の振動状態を高速にスイッチングできる手法の考案である。本成果はApplied Physics Express誌に掲載された。また、結合機械共振器を用いて実験的にデモンストレーションすることにも成功している。 これらの実験には主に二次元電子系を組み込んだ機械共振器を用いているが、この機械共振器を使って二次元電子系の物性を調べる研究についても進展を見た。機械共振のQ値の変化より、二次元電子系におけるエネルギー散逸を評価することに成功した。この成果はApplied Physics Letters誌に掲載された。 一方、半導体の特性を用いた光・機械結合動作においても大きな進展を見ている。GaAsカンチレバーにおける結合メカニズムの解明が進み、さらにはGaAs/AlGaAs構造を新しく用いることにより、レーザー冷却の兆候が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の予定に記載した「新しい共振器構造による高周波共振器の実現」に関しては、予定どおりダイヤフラム構造のパラメトリック共振器の作製に成功した。「高次モードの利用」については、異なるモード間の強結合に成功した。「パラメトリック共振器の特性向上」については、窒素ドープの構造を用いることにより、桁違いに高いQ値を持つ共振器の作製に成功した。「結合共振器におけるパラメトリックモード変換」については、周波数が異なる結合共振器間でのモード結合に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のペースで研究を進めれることが望ましい。いくつか優れた結果が創出されているので、できるだけこれら異なる成果同士を有機的に結び付け、より機能性の高い非線形ナノメカニカル素子の作製を試みる。
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