研究課題/領域番号 |
23241051
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土橋 律 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237177)
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研究分担者 |
越 光男 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20133085)
桑名 一徳 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (30447429)
茂木 俊夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50392668)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 安全工学 / 燃焼爆発 / 大規模詳細反応機構 / 数値流体計算 / 爆発限界 / 火炎不安定性 |
研究概要 |
①爆発の発生限界(爆発限界)の予測手法の確立 自己着火性混合気体の爆発限界を予測するための詳細反応機構を量子化学計算に基づいて構築した.前年度より行っているヒドラジンの自己着火性について、酸化剤がN2O4/NO2混合気の場合の反応機構を完成させた.爆発・爆轟限界予測のための流体力学計算に詳細反応機構を組み込む方法論の開発を行った.特に大規模詳細反応機構の高速積分法を開発した. ②爆発被害の影響度評価手法の確立 (a)火炎の不安定性解析: 火炎伝播速度の上昇に関する重要なパラメータとして,混合気のMarkstein数がある.詳細化学反応計算を実施すれば様々な条件の混合気に対してMarkstein数を計算することが可能であり,実験と矛盾しない計算結果を得ることができる.ところが,大規模な爆発シミュレーションで詳細化学反応メカニズムを考慮することは計算負荷の観点からほぼ不可能である.そこで,一段反応のような簡易反応メカニズムを用いても混合気のMarkstein数を正しく表現する方法について検討し,新たな簡易反応モデルを提案した. (b)爆発実験: 前年度準備した,ガス供給系,火炎伝ぱ挙動および爆風圧計測手法を用いて,3m立方(27m3)のガス爆発実験を実施した.火炎の不安定性について解析した結果,火炎の不安定性による火炎伝ぱの加速現象が発生する臨海火炎半径を実験から求めた.さらに,水素のの球状伝ぱ火炎について,臨界火炎半径を火炎帯厚さで無次元化して求めた臨界Peclet数を用いて整理した結果,当量比が小さくなると火炎伝ぱの加速現象が発生する臨界火炎半径が小さくなり,臨界Peclet数も小さくなる傾向があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①爆発の発生限界(爆発限界)の予測手法の確立 予定にしたがって自己着火性気体の爆発限界予測のための詳細反応機構を構築し,ヒドラジンの着火限界予測が本年度でほぼ完成した.また爆轟限界や着火限界予測のために必要な大規模詳細反応を組み込んだ流体計算法の開発については,実際に圧縮性流体に大規模詳細反応を組み込んだ炭化水素燃料の自着火シミュレーションを世に先駆けて実施した. ②爆発被害の影響度評価手法の確立 簡易反応モデルを構築するとともに,実験により火炎伝ぱ不安定性に関する新規の知見を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
①爆発の発生限界(爆発限界)の予測手法の確立 ヒドラジンとN2O4/O2混合系の自己着火性気体の爆発限界予測については本年度完成したが,次年度以降はモノメチルヒドラジンおよびジメチルヒドラジンについての詳細反応機構の構築を目指す. 爆轟・爆発限界予測のための数値流体計算法の構築については,圧縮性流体の場合の大規模詳細反応機構の組み込みについて本年度大きな進展を得ている.今後の課題は本年度構築した方法をさらに多くの系に適用して本方法の有効性を実証すること,および非圧縮性流体シミュレーションに大規模詳細反応機構を組み込む方法論を構築することにある. ②爆発被害の影響度評価手法の確立 簡易反応モデルの検証のため,実験データとの比較検討を行い,さらに精度を高める.爆発実験については,昨年度取得できなかった条件での実験を行うとともに,再実験を行い,実験データの精度を高める予定である.
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