本年度はひわまり8号AHI画像を10分毎に処理し,東アジア148活火山のデータをリアルタイム観測するシステムのプロトタイプの開発を進めた.本システムでは,通信情報機構のNICTサイエンスクラウドからAHIデータを10分毎にダウンロードし,逐次処理を行う.処理ルーチンでは,輝度補正を行った後,1.6um,2.3um,3.9um,11um,12umの画像について,対象とする火山を中心とする101画素×101画素の領域を切り出し保存する.同時に,各火山の画像から火口付近で最高値を示す画素を抽出し,その輝度温度の時間変化を示すチャートの作成を行う.また,これらの画像やチャートをリアルタイムおよびアーカイブを含め,Webベースで閲覧・取り出す機能も組込まれている. また,次世代衛星の利用を含む新しい噴火推移観測手法として,「ひまわり8号/AHIの10分毎の高時間分解能画像」と「WorldView等の数10cmレベルの高い空間分解能をもつ高分解能画像」およびそれらを繋ぐ「中分解能・中観測頻度の画像(GCOM-C/SGLI,VIIRS等)」を組合せた解析方法の確立に取組んだ.この具体的な応用として,2015年6-8月にインドネシア,ラウン火山で発生した噴火推移の解析を行った.この結果,溶岩の噴出によるカルデラ床の埋積過程,溶岩の噴出開始の正確な日時,活動レベルの時間変化,噴火に先行する熱異常の発生等をについて情報を得ることができ,噴火推移を予想以上に詳しく推定することができた.これにより,本手法は遠隔地の火山の噴火推移観測に極めて有効であることが確かめられた.
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