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2011 年度 実績報告書

種間比較による細菌細胞機能のオーガナイザーとしての核様体の構築原理の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23241062
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

小笠原 直毅  奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (10110553)

キーワード核様体 / 大腸菌 / 枯草菌 / シュードモナス / GeF-seq
研究概要

1)シュードモナスを用いた核様体タンパク質遺伝子欠失株の作成:接合を利用した遺伝子破壊システムを用いて欠失株を作成中であるが、標的遺伝子にマーカー遺伝子を挿入したプラスミドの作成および接合用大腸菌への導入は行える一方、変異株を得ることには成功していない。核様体遺伝子の破壊によって、シュードモナスの生育が極端に悪化した結果として、本方法では、破壊できていない可能性がある。実際、ミニトランスポゾン挿入法によりHU破壊株の取得に成功し、mm破壊株の生育が悪く、細胞長が伸長することが判明したことから、生育不全が大きな影響を与えないトランスポゾン法を含む他の遺伝子破壊方法を探索中である。
2)シュードモナス、枯草菌の新規核様体タンパク質の同定:(1)細胞をホルムアルデヒド処理することにより核様体複合体を架橋した後、複合体をDNAを特異的に吸着するガラスビーズで精製し、そこに含まれるタンパク質を質量分析により決定する、(2)GFP融合タンパク質が核様体に局在するかを検証し、新規核様体タンパク質を決定する。このシステムを用いて、枯草菌の新規核様体タンパク質を探索したところ、(1)では既知の核様体タンパク質(Hbs、AbrB、Abh)、DNA結合タンパク質(RNA polymerase、トポイソメラーゼ、Rho因子、DNA複製タンパク質)に加え、31の核様体タンパク質候補を検出した。(2)では、既知の核様体タンパク質であるHbs、AbrB、Abhに加え、新たに2つのタンパク質が核様体候補として絞り込まれた。シュードモナスに関しては、GFP融合タンパク質の細胞内局在を調べるために必須となる、蛍光物質非生産株を作成した。
3)新たなDNA結合プロファイル解析法の構築:細胞内DNaseI消化とChAP法を組み合わせることで、これまでの、ChAP-chip解析と比べ、飛躍的に解像度の上昇したGeF-seq法の構築に成功し、枯草菌の核様体タンパク質の結合プロファイルを詳細に決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

枯草菌の新規核様体タンパク質候補の探索および結合プロファイルの解析に関しては、新たな方法を構築し、それを用いて解析を行った結果、新規核様体タンパク質候補を特定できた。また、GeF-seq法を開発し、高解像度で、核様体タンパク質の結合プロファイルを決定した。同時に、シュードモナスでタンパク質の細胞内局在を解析するための、蛍光物質非生産株を構築できた。これらの点から、次年度以降、3種のバクテリア間で、核様体構造を比較する基礎は出来上がったと言える。シュードモナスに関しては、おそらく、核様体遺伝子欠失株の生育不良が推測され、接合を用いた遺伝子破壊法では、効率的な遺伝子破壊ができない可能性が示唆された。そのため、体系的な解析に適した破壊法を、現在、探索中であり、少なくともトランスポゾン挿入で、遺伝子破壊が可能であることは確認できた。現在のところ、シュードモナスの核様体遺伝子の破壊に関する問題はあるものの、改善する点が明らかであり、それ以外の点については、順調に推移していることから、おおむね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

1)核様体タンパク質結合プロファイルの体系的解析:枯草菌・大腸菌に関しては、順次His-tagを付加し、GeF-seq法により核様体タンパク質の結合プロファイルを体系的に決定する。大腸菌においては、Hu,H-NS,IHF,Fis,MukおよびDnaAを、枯草菌においてはHU,CcpA,SMCおよび新規核様体タンパク質を第一候補とし、解析を進めてゆく。2)シュードモナスの体系的欠失株の構築:シュードモナスに関しては、新たに大阪大学の戸邉亨博士に連携研究者として加わっていただき、簡便で、確実な遺伝子破壊とHis-tag付加の方法を確立し、核様体遺伝子の破壊株を作成すると同時に、His-tag付加株を構築し、それを用いて核様体タンパク質結合プロファイルの体系的解析を行う。3)RNA-seqを用いた核様体構造変化に付随したトランスクリプトームの変化の解析:核様体構造の変化が与えるバクテリアのトランスクリプトームの解析を、次世代シーケンサによるRNA-seqを用いて開始する。4)次世代シーケンスデータの統合解析:次世代シーケンサで得られたGeF-seqおよびトランスクリプトームデータの統合解析を行う技術の構築を開始する。新たに得られる様々な、次世代シーケンスデータを統合して解釈することで、核様体構造の違い、あるいはトランスクリプトームに与える影響などに関して、菌種間の相違あるいは類似性を見出したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Regulation of chromosomal replication initiation by oriC-proximal DnaA-box clusters in Bacillus subtilis2012

    • 著者名/発表者名
      Okumura H, Yoshimura M, Ueki M, Oshima T, Ogasawara N, Shu Ishikawa
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res

      巻: 40 ページ: 220-234

    • 査読あり
  • [学会発表] バクテリアの転写サイレンシングによる外来遺伝子の発現制御2012

    • 著者名/発表者名
      大島拓
    • 学会等名
      遺伝研研究会(単細胞生物における細胞構築と増殖制御の研究)
    • 発表場所
      国立遺伝学研究所(三島)(招待講演)
    • 年月日
      2012-03-21
  • [学会発表] 次世代シーケンサを用いた網羅解析の可能性2012

    • 著者名/発表者名
      大島拓
    • 学会等名
      第6回日本ゲノム微生物学会
    • 発表場所
      立教大学(東京)(招待講演)
    • 年月日
      2012-03-12

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公開日: 2013-06-26  

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