研究課題/領域番号 |
23241064
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
仙波 憲太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70206663)
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研究分担者 |
伊藤 恵美 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (50540796)
今井 順一 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (70376739)
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キーワード | 分子腫瘍学 / ゲノム発現 / 婦人科腫瘍学 |
研究概要 |
遺伝子の質的・量的変異はさまざまな疾患を発症させる。点変異や染色体転座によって変異した遺伝子は次世代シークエンス技術の進歩により確定できるようになったが、複数の遺伝子が増幅する遺伝子増幅では、配列情報だけで疾患の原因遺伝子を確定することは不可能である。我々は、遺伝子増幅が最も顕著に見られる「癌」に着目し、これまでに収集した「2000例以上におよぶ癌組織の遺伝子発現情報」および「ヒト完全長cDNAライブラリー」という独自の研究資源を利用したアンプリコンの体系的機能解析システム(systematic functional analysis of amplicomes)を提案し、癌におけるamplicemeの生物学的意義を明らかにする。 平成23年度は、異なる3種の細胞を用いる実験系でトランスフォーメーションと浸潤能の促進を指標とした遺伝子機能評価系を立ち上げ、乳癌の25%に見られる代表的な17q12-21のアンプリコン(ErbB2アンプリコン)を中心として、発癌に関わる遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、ErbB2アンプリコンにはこれまでに知られていた癌遺伝子ERBB2以外に少なくとも2種類の発癌に関与・する遺伝子(HNF-18とGRB7)と少なくとも1種類の浸潤能の促進に関わる遺伝子(RARA)が存在することを明らかにした。このうち、GRB7はそれ自身ではNIH3T3細胞をトランスフォームする活性を持たないが、ERBB2と協調的にトランスフォーメーションを促進するcontext-dependent oncogene(サポーター遺伝子)であることがわかった。 以上の成果の一部は、日本癌学会学術総会などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、ErbB2増幅乳癌にみられるErbB2アンプリコンに、トランスフォーム活性のある遺伝子を2種、浸潤能を促進する遺伝子を1種、新たに見いだしたアンプリコンからもトランスフォーム活性のある遺伝子を1種同定し、一部の成果は論文投稿中である。また、浸潤能を検証する機能アッセイを立ち上げ、新たな遺伝子を同定することにも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度にはあらたに浸潤能を検証する実験系を確立した関係で、乳癌のアンプリコン23カ所の包括的な解析は終了していない。これについては24年度以降も引き続いて解析していく。
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