研究概要 |
我々は平成16年~17年に193種のヒト癌細胞株から遺伝子発現情報を収集した。そのデータの解析と実験的検証を繰り返して効率的な 遺伝子増幅領域(アンプリコン)の抽出法を確立し(Ito et al, 2007)、35種の乳癌の細胞株から32カ所のアンプリコン候補領域を抽出した。アンプリコンに存在する遺伝子を一つずつ単離して調べることは現実的に不可能と思われたが、我々はヒト完全長cDNA発現ライブラリーを持つ五島(産総研)らとの連携により、べての遺伝子を個別に発現させる実験系を構築した。これまでに乳腺の管腔構造のモデルであるヒトMCF10A細胞、上皮細胞由来のNMuMG細胞、発癌実験でもっともポピュラーなNIH3T3細胞にecotropicレセプターを発現させる等の目的に応じた改変を行って使用すること により、複数のがん遺伝子候補を単離することに成功し、このうちGRB7については論文報告した(Saito et al, 2012)。平成25年度は、ルシフェラーゼを発現させたNMuMG細胞に細胞膜タンパク質あるいはキナーゼ遺伝子205個を40個ずつのセットにして導入したものをヌードマウスに移植するという腫瘍形成実験をがん遺伝子スクリーニングに転用する手法を開発し、実際、それによりあらたに3種類の遺伝子をがん遺伝子として同定することに成功した。
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