研究課題/領域番号 |
23241066
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
榊原 康文 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10287427)
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研究分担者 |
若林 雄一 千葉県がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (40303119)
佐藤 健吾 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (20365472)
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キーワード | 発がん / 非コードRNA / 遺伝子発現解析 / 次世代シークエンサー / 腫瘍 / マウス |
研究概要 |
背中皮膚に対しDMBA-TPA 薬剤処理による発がん実験を施した計16 匹のFVB 系統マウスを用いた.発がん実験8 週目,13 週目,23 週目に腫瘍の採取を行った.良性腫瘍の採取は二通りの手法で行った.一つ目の手法では,マウスを麻酔により眠らせた後,一度の採取あたり2-3 個の良性腫瘍全体を採取した.もう一つの手法では,発がん過程における腫瘍内のゲノム変異を経時的に得るため,腫瘍全体を採取するのではなく,腫瘍の一部分を削るように採取した.これらをサンプル採取の度に繰り返すことにより,前者の手法では同一個体から,後者の手法では同一個体かつ同一腫瘍から経時的なサンプルが得られた.以降,前者のサンプリング手法を全部取り,後者の手法を部分取りと記述する.また,サンプル採取の手法は各個体毎に固定した.悪性腫瘍および転移性腫瘍のサンプリングは,マウスを安楽死させて腫瘍を採取した.悪性腫瘍は腫瘍中央の断片を,転移性腫瘍は前足の付け根にできた腫瘍を採取した. 本年度では,次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析として,同一の個体から得た全部取りによる良性腫瘍,悪性腫瘍,転移性腫瘍,および腫瘍が形成していない正常な背中皮膚の4 ステージをサンプルとして用いた.DNase処理,SMARTerキットによるcDNA合成後,Illumina Genome Analyzer IIxを用いてペアエンドリード60 ntでシークエンシングした. 発現差異遺伝子探索の手法として,まずBowtie2およびTopHatを用いて,得られたリードをゲノムにマッピングした.このマッピング情報を基に,Cufflinksを用いることで正常細胞と各腫瘍細胞の発現量を比較し,発現差異遺伝子を網羅的にそれぞれ判定探索した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
薬剤処理を用いたマウスの発がん実験は,非常に難しい実験系であり,今回,合計16匹のマウスを用いることにより,最後の腫瘍転移まで発がんを進行させることができたが,通常はもっと多くのマウスと時間をかけないと転移まで進行しない.我々のチームの技術力と今までの豊富な経験があったので,発がん実験を効率よく進めることができた. さらに,そのマウス発がん実験の各腫瘍サンプルからTotal RNAを抽出して,次世代シークエンサー用にサンプル調整を行い,最初の次世代シークエンスを行うところまで達成出来たのは,計画以上に進展をしている.
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今後の研究の推進方策 |
最初のマウス発がん実験が成功して,発がん各ステージから取得した腫瘍サンプルに対して,次世代シークエンスまで達成できたので,次年度は,取得された次世代シークエンスデータを解析する計算手法の開発と,開発した手法による統計解析を行い,生物学的な知見を得ることを第一の目標とする. さらに,部分取りのサンプルを得るためやバイオロジカルリプリケイトを得るために,マウス発がん実験を複数回行い,次世代シークエンスを行う.
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