研究課題/領域番号 |
23241066
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
榊原 康文 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10287427)
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研究分担者 |
若林 雄一 千葉県がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (40303119)
佐藤 健吾 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (20365472)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発がん / 非コードRNA / 遺伝子発現解析 / 次世代シークエンサー / 腫瘍 / マウス |
研究概要 |
最初のマウス発がん実験から得られた腫瘍サンプルに対して,次世代シークエンスによるリードデータが得られた.発現差異遺伝子探索の手法として,得られたリードをBowtie2およびTophatを用いてマウスゲノムにマッピングした.このマッピング結果を基に,Cuffdiff2による正規化発現量FPKMの算出,および4組織間6通りの発現量比較を行なうことで,少なくとも2組織間で有意な発現量を示す発現差異遺伝子候補群を取得した. 次に,探索された発現差異遺伝子群の経時的トランスクリプトーム動態を解明するため,デジタルクラスタリングという手法を開発した.4 ステージ間計6通りの検定結果をデジタル化した6 次元ベクトルを構築し,これをマンハッタン距離を用いたウォード法による階層的クラスタリングを行った.本手法で得られた発現差異遺伝子候補群に対し既存のクラスタリング手法と比較を行った結果,既存手法では得ることができない,検定結果に基づいたクラスタが得られた. さらに,マウス発がん実験から得られた4サンプルについて,small RNAを抽出し,次世代シークエンサーによるsmall RNA seqを行なった.次に,その発現量を用いて発現差異非コードRNAの探索とクラスタリング解析を行った. その結果,miRNAとtRNAのクラスタリング解析から,それぞれステージで特徴的な発現パターンが見られた.これにより,miRNAだけでなくtRNAの発現もがんに関連していると示唆された.また,がんに関連するmiRNAを解析したところ,経時的な発現変化が見られ,miRNAは発がんで段階的に関与していると示唆された.さらに,tRNAのマッピング形状と発現量変化から,tRNAの一部が切り出されて,それが発がん過程に関与していると示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,最初のマウス発がん実験で採取した腫瘍サンプルから次世代シークエンスにより得られたデータの解析を行うためのアルゴリズムの開発と,そのプログラムを用いた遺伝子発現解析を行った.さらに,非コードRNAの発現解析まで進むことができた.これにより,本研究課題を申請した時の目標の前半がほぼ達成されたことになる.したがって,研究はおおむね順調に進行していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の前半の目標はほぼ達成されたので,残り2年間で本研究課題のもっとも難しいかつ挑戦的な発がんにおける非コードRNAのネットワーク解析に着手する.すでに,ネットワーク解析に必要な相互作用予測プログラムの開発は進んでいるため,マウス発がん実験から得られる次世代シークエンスデータを活用しながら,生物学的ネットワークの解明を進めていく.
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