研究課題
基盤研究(A)
天然有機化合物の生合成に関わる二次代謝酵素の中には、極めて寛容な基質特異性と潜在的触媒能力を有するものがあり、人為的な機能制御と分子多様性創出の格好のモデルとなりうる。本研究では、植物フェニルプロパノイドの生合成において鍵酵素となる4-クマロイルCoAリガーゼとポリケタイド合成酵素(III型PKS)などの二次代謝酵素をとりあげる。有機化学を基盤として、分子生物学や構造生物学、タンパク工学の技術などを駆使することにより、酵素触媒機能の制御と高機能性スーパー生体触媒の創製をめざす。既に我々は、Huperzia serrata由来PKS1に,カルバモイル基を有する安息香酸やピコリン酸などのCoAチオエステルを開始期質として作用させた場合、炭素鎖伸長の後、シッフ塩基の形成を介したC-N結合形成と閉環反応が進行して、非天然型新規アルカロイド骨格を生成することを報告した。今回我々は、X線結晶構造解析に基づく変異酵素との組合わせにより、さらなる酵素触媒機能の拡張と非天然型新規化合物の創出を試みた。その結果、S348G変異体において、2-カルバモイル安息香酸のCoAチオエステルを開始基質として3分子のマロニルCoAを縮合の後、シッフ塩基の形成を介したC-N結合形成とC-C結合形成が進行して、環拡大した6-7-6縮合環構造をもつ非天然型新規アルカロイドを新たに生成することを見出した。一方、光学活性アミノ酸誘導体をプローブとした新規酵素触媒機能の開拓にも取り組んだ。その結果、光学活性アミノ酸誘導体をプローブとして、非天然型新規化合物の創出と酵素触媒機能の拡張に成功した。
2: おおむね順調に進展している
所期の目的をほぼ達成することができている。
X線結晶構造解析により、酵素反応中間体の静的配置及び酵素反応の進行に伴う動的変化を解明し、閉環反応の化学を制御する。結晶構造に基づき、さらなる酵素触媒機能の拡張と酵素触媒機能の最適化をはかる。今年度は新たに、酵素活性部位に金属を配した人工金属酵素の開発に重点を置く。一方、4-クマロイルCoAリガーゼ、また、今年度は新たに、プレニル転位酵素について、野生型および変異型酵素のX線結晶構造解析に取り組む。X線結晶構造解析により、酵素反応の立体構造基盤を解明、および、結晶構造に基づく合理的な酵素触媒機能の制御と最適化により、非天然型新規酵素活性に特化した生体触媒の創製に着手する。
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