研究実績の概要 |
糖鎖プライマー法を用いたグライコミクスとして各種がん細胞に発現する糖鎖の比較解析を行った。 液体クロマトグラフィーとイオントラップ型の質量分析装置を接続したLC-MSを用いて迅速且つ簡便に発現糖鎖の比較解析を行った。特に前立腺がん、肝がん、胃がん、乳がん細胞で発現する糖鎖プライマー由来の糖鎖伸長生成物での検出量での比較を行い、特定の糖鎖プライマーからの糖鎖伸長生成物により、各がん細胞が明確に区別されることが明らかとなった。さらに前立腺がんではこれまでに糖鎖マーカーは殆ど知られていなかったが、他のがん細胞とは異なる糖鎖が過剰発現されている事が見いだされたことから、新たな腫瘍マーカー候補を見いだした。 ムコ多糖症(MPS)の早期診断を行うための診断薬の候補となる糖鎖ライブラリーの構築を行った。MPS診断薬の獲得を目指し、正常ヒト皮膚線維芽 (NB1RGB) 細胞に糖鎖プライマーXyl-Ser-C12を投与した。また、イズロン酸 (IdoA) 2位に硫酸基を有する構造を持つ生成物の合成を促進するため、レトロウイルスを用いて硫酸基転移酵素 (UST) の過剰発現細胞を構築した。UST過剰発現NB1RGB細胞では、硫酸化糖鎖の種類や量の増加がみられた。糖鎖構造の解析結果より、MPS I, Ⅱ, ⅣA, Ⅵ, Ⅶ型に対する診断薬になると期待される糖鎖を含むライブラリーの構築に成功した。 インフルエンザウイルスの検出を行うための糖鎖ライブラリーを作製した。得られた糖鎖ライブラリーの微粒子への固定化効率の向上を達成し、インフルエンザウイルスやヘマグルチニンの検出に成功した。 これ以外に、糖鎖認識を利用したペプチド提示リポソームによるドラッグデリバリーシステム、インフルエンザウイルスと相互作用する糖ミミックペプチド、および多糖ナノ粒子による細胞内へのドラッグデリバリーシステムの開発を行った。
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