研究課題/領域番号 |
23241077
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
|
研究分担者 |
東 淳樹 岩手大学, 農学部, 講師 (10322968)
角谷 拓 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (40451843)
深澤 圭太 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (90617101)
|
研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
|
キーワード | 生物多様性評価 / ニッチモデル / 食物網 / 景観構造 / 温暖化 |
研究概要 |
高次捕食者の生息適地の地理的差異と共通性を解明するため、里山の猛禽サシバの生息適地モデルを作成した。対象は、国内の分布中心(栃木、千葉)と周辺(岩手、福岡)である。その結果、サシバの在確率に対し、林縁は4地域を通して重要であることが分かった。一方、広葉樹林の重要性は、分断化が進んだ千葉で高く、北限で森の広い岩手で低いなど、餌生物量や開発程度の違いが、生息適地の地理的差異を生じさせていると考えられた。サシバの生息地適を明らかにするため、サシバと餌生物の分布などを、千葉と福岡で調べた。千葉では、農地整備の進んだ場所でカエルの密度が低かった。また、福岡の二毛作地帯では、カエルがほとんど生息していなかった。これらの地域でもサシバは広く分布していることから、草地に生息するバッタなどに依存している可能性があり、これが、上述した生息適地の地理的差異に関係していると考えられた。日本における繁殖鳥類の分布変化を移入と生残の結果としてとらえる統計モデルにより、生残率に対する気候や土地利用の効果、および移入率に対する距離の効果を同時推定した。推定値を用いて、現在の環境条件が不変という仮定の下で将来の分布域変化のシミュレーションを行ったところ、多くの鳥類種は分布拡大することが予測された。高次捕食者である猛禽類については、サシバやクマタカなど分布拡大する種が多い一方で、イヌワシは急速に分布域が縮小し、100年後には分布面積が1/10-1/100になることが予測された。また日本各地で繁殖するサシバの羽のサンプルを収集し、DNA解析を実施した。その結果、全国に広く分布するタイプと西日本に特異的に出現するタイプに分かれた。農耕地を利用する猛禽類の環境利用の違いについては、大潟村干拓地におけるチュウヒは、ヨシ原の周辺の採草地、ヨシを積極的に利用し、営農された水田等を避ける傾向が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究そのものは比較的順調に進捗しているが、データ量が膨大なため解析に手間取り、業績としてのアウトプットが遅れている。これはポスドクの入れ替えに伴う問題もあった。しかし、現在査読中のものもあるため、年度内には一定の業績は出ると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、まずサシバの分布北限域と西限域において重点調査を行う。特に、餌生物のフェノロジーを明らかにし、景観構造と分布の関係性が変化するメカニズムを明らかにする。また、鳥類全般の分散距離や土地利用変化に対する感受性については、食性などの形質との連関を統計的に明らかにする。
|