研究課題/領域番号 |
23241084
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
足立 眞理子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (10347479)
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研究分担者 |
申 キヨン お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (00514291)
姉歯 暁 駒澤大学, 経済学部, 教授 (40259221)
舘 かおる お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (50155082)
山田 和代 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (50324562)
斎藤 悦子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (90298414)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グローバル金融危機以降 / 国際研究者交流(英:米:韓国:台湾:ベトナム) / 国際情報交換(多国籍) / ジェンダー / 金融排除/包摂 / ケア・エコノミー / 女性関連産業 / 高齢社会対応産業 |
研究概要 |
国内外の実態調査、国際・国内学会、シンポジウム、収集資料の整理を行い、研究成果をまとめ刊行する。 I.グローバル金融危機以降におけるアジアの新興/成熟経済社会の実態調査結果のまとめと理論化:1. 生産領域問題群:(1)縫製・衣料産業…日本(岩手県、山形県)、バングラデシュでの企業インタビュー、製造工場調査(特に、中国からの二次移転状況と技術、訓練を中心として、既に収集した情報をまとめる。また、日本(岩手県、山形県)において、海外移転せず、国内に製造拠点を維持している縫製・繊維工場の経営方法、技術水準、雇用実態の聞き取り、および市役所、行政サービスの調査委をまとめる。(2)高齢化対応産業…日本(福井県)、中国(上海)における、車いす製造企業の実態調査(工場内生産配置、従業員インタビュー)を基礎として、制度の比較研究(介護保険を中心として)をまとめる。2. 再生産領域問題群:日本及び韓国の生命保険会社の比較調査として、日本本社、韓国―ベトナム支社の実態調査を行い、生命保険業務のアジア地域の世帯構造に浸透した過程に着目した調査結果に基づき、新しい概念化(労働過程の三極構造と顧客ケア)を目指す。3. 金融・情報問題群:米国(サンフランシスコ、ロサンゼルス)と日本(東京)の世帯構造変化と金融資産・負債状況に関し、金融機関、信用組合、不動産開発企業、個人インタビューを実施、資料を収集することを通して、金融排除/包摂とジェンダーの関係に関する理論化を目指す。1.2.3をとおして、グローバル下における金融・生産・再生産領域の接合関係を明らかにし、メゾ・レベル分析の重要性を理論的に提示する。 II国際学会・国内学会および国際シンポジウムの研究成果のまとめ 既発表の国際学会・国内学会、国際シンポジウムの成果を、理論的に精査し、新しい知見をまとめ、総合的な研究成果報告を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通りの実態調査を行うことができたので、貴重な資料、個別インタビューを収集しており、そこから新たな知見を得ると共に、理論化作業が進んでいる。国際シンポジウムおよび国際学会、国内学会で、それぞれ担当領域での報告を行っており、既に、部分的には刊行しており、最終的な成果を統合化する段階に入っている。また、2011年6月の国連開発機構(UNDP)との共催による基調講演および国際シンポジウム(お茶の水女子大学ジェンダー研究センター年報『ジェンダー研究』2012年、2013年、2014年度版所収 お茶の水女子大学ジェンダー研究センター編)で提示された、最新のグローバル化とジェンダー配置に関する理論研究を、アジアを主たるフィールドとして検証・応用するとともに、新たな視点を付加した理論化を行っている。 とりわけ本研究は、1.ケア・エコノミーとマーケット・エコノミーの関連についての理論研究、2.グローバル下の金融領域、生産領域、再生産領域の接合の理論枠組み提示、3.金融排除/包摂とジェンダー関係の分析を行うことによる、これまでの経済学(マクロ/ミクロ理論)の枠組みに、メゾ・レベル分析を導入する必要性を明示化、4.金融危機以降のアジアにおいて、多国籍企業(日本を含む)の中国からの二次移転の実態と影響、その反作用としてのBPO(企業のバックオフィス機能の外部化)産業の活性化の現況、5.政策と制度設計の仕組みが、ジェンダー化された産業(女性関連産業、高齢社会対応産業等)に与える影響の分析(制度の競争)という、新たな知見の提供という意味をもつものである。 ただし、本研究遂行期間においては、方法論とは別に、中国の住宅金融等に関するインタビューなどは十分に検討できておらず、次機会に譲るものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、グローバル金融危機以降のアジア新興/成熟社会の変貌をジェンダー視点からとらえるものであり、特徴として、明示的に金融領域とジェンダーの関係を分析し、金融、生産領域と再生産領域の接合関係に焦点を当てている。本研究により、グローバル金融危機の原因となったサブプライム・ローンの問題にたいする分析枠組みとして、メゾ・レベル分析の重要性が明らかになった。 今後は、これをより、アジア新興/成熟社会の動態に結び付ける方向で研究課題を推進する必要がある。とりわけ中国の内陸部への財政投資と、消費者金融・住宅金融等の問題と連携させて分析することが重要であると考えている。今後も、本研究で実施した実態調査を量的・質的調査として完成させ、21世紀アジアの姿をジェンダーに敏感な視点から、浮き彫りにさせていきたい。
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