研究課題
基盤研究(A)
(1)臨床倫理検討システムの見直しを、現場に同システムを提供する観点で行い、研究代表者の関心ではなく、医療・介護従事者の関心に合わせて、より明快なものとする検討を行った。その成果は『臨床倫理エッセンシャルズ』(2012年春版)として刊行し、また、ウェブ上で使えるようにし、本研究として開催した臨床倫理セミナーで使用して、医療・介護従事者の使い勝手を調べた(清水・会田・竹内)。(2)高齢者ケア・介護チームは、清水と会田が、日本老年学会の企画に応じて、高齢者への人工的水分・栄養補給の導入をめぐる意思決定プロセスについてのガイドライン作りに参加したが、その際に、本研究の理論を実際の高齢者ケアの現場で活かすためにはどのようにガイドラインに反映させたらよいかの検討を本研究として行った(実際に本研究の理論を反映したガイドラインを老年医学会のワーキンググループとして公表した)。(3)本人・家族の意思決定チームは、(2)と連動して、高齢者における人工的水分・栄養補給の導入についての意思決定プロセスを本人・家族が適切に進むことができるよう支援するツール-意思決定プロセスノート(すでに22年度に試行版を作った)の改訂を進め、本研究として理論的側面の検討を行った。成果は、ガイドラインに併せて作成した『高齢者ケアと人工栄養を考える-本人・家族の選択のために』に反映している。また、ALS患者が人工呼吸器を着けるかどうかの選択を支援するツール制作に際して理論面の検討を本研究として行った。これらの制作・改訂に伴って、意思決定プロセスノート汎用版の構想の改訂を進めた。(4)がん治療・緩和ケアチームは、緩和医療学会の終末期の輸液についてのガイドライン改訂に協力し、本研究の考え方をその倫理面に反映させた。また、本人・家族の生活を支援するガイドブックの企画に、臨床倫理・臨床死生学の視点からの参加をしつつある(田代・清水)。
2: おおむね順調に進展している
実績の概要で言及した項目については、当初の計画以上に進展している。すでに具体的成果があがっており、ウェブ上のコンテンツの充実は次年度以降に予定されていたものである。他面、ケーススタディチームは、予定されていた担当者(研究協力者)が相次いで妊娠したため、活動が先送りとなった。また、救急救命分野等、対象領域を広げることは年度内には実現できなかった。
(1)臨床倫理システムの見直し:共通理解のモジュール化とプレゼンテーションの仕方の適切化を図る。すでに始めたウェブ上での提示の試みも併せ、理論とその提示法とを組にしてブラッシュアップする。(2)高齢者ケア:人工的水分・栄養補給をめぐるガイドラインを現場で使うようにする試みと本人・家族のプロセスノート改訂とを併せ行い、高齢者ケア全体の中に位置づける。医療・介護の専門家との協働を推進する。(3)既に作成したガイドラインには汎用性があるので、これを基礎にいろいろな現場におけるトピックについても開発する。(4)がん治療・緩和ケアについて、家族の看取りを支援するツールの作成へとプロセスノートを展開する。
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日本老年医学会雑誌
巻: 49-1 ページ: 71-74
シリーズ生命倫理学第4巻:終末期医療(丸善)
巻: (印刷中)
臨床栄養
巻: 119-2,3,5,6,7 ページ: 185-8,297-303,561-7,671-6,795-800
巻: 119巻 ページ: 132-133
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/dls/cleth/index-j.html