研究課題/領域番号 |
23242009
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
井上 厚史 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (90259565)
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研究分担者 |
木村 純二 弘前大学, 人文学部, 教授 (00345240)
李 暁東 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (10405475)
吉田 真樹 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20381733)
中 純夫 京都府立大学, 文学部, 教授 (50207700)
辺 英浩 都留文科大学, 文学部, 教授 (50264693)
シン 東風 愛媛大学, 法文学部, 教授 (50335882)
権 純哲 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (80253178)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 朝鮮陽明学 / 王陽明 / 鄭霞谷 / 近代化 / 近代儒教 / 梁啓超 / 朴殷植 |
研究実績の概要 |
第6回研究発表会を、8月29日、30日の二日間、京都府立大学において「朝鮮陽明学をどう評価するか」をテーマとして実施。発表者は、陳来(中国・清華大学)「李退渓と李栗谷の理発気発説」、沈慶昊(韓国・高麗大)「江華学派研究のための覚書」、李明輝(台湾・中央研究院)「韓儒・韓元震の王陽明思想批判」、中純夫(京都府大)「李匡臣における霞谷学の受容」、張崑将(台湾師範大学)「朝鮮儒者の鄭霞谷と閔彦暉における華夷論争」、崔在穆(韓国・嶺南大)「盧守愼の『大学集録』と朝鮮陽明学の性格」、権純哲(埼玉大)「沈大允における心学」。コメンテーターとして楊国栄氏(中国・華東師範大学)に参加してもらい、総合討論を実施した。 第7回研究発表会を、2014年12月18日、19日の二日間、静岡県立大学において「東アジアの近代化と儒教」をテーマとして実施。発表者は、米原謙(元大阪大学教授)「幕末国学と国体論」、李暁東(島根県立大)「梁啓超における立憲政治と儒教-「大同」と「小康」の間」、大田英昭(中国・東北師範大)「日本における初期社会主義の形成と儒学―片山潜を中心に―」、吉田真樹(静岡県立大)「井上哲次郎と和辻哲郎の儒教の捉え方」、盧官汎 (韓国・幹林大学) 「韓国近代儒教の一読法:世俗化と共同体」、黄麗生(台湾・台湾海洋大)「日帝時期における朴殷植の開化意識と陽明学」。 二つの研究会を通して、日中韓における陽明学および近代儒教の捉え方の相違が改めて浮き彫りになった。特に問題なのは、近年儒教関係のシンポジウムが多数開催されていながら、各国の研究が孤立した状態で進行しており、「朝鮮儒教」に対する理解が深まったとは決して言えないことである。この状況を打開するためには、日中韓の研究者による対話や共同研究をもっと増やし、朝鮮儒教に関する共通認識を高めていく必要性が急務であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)第6回研究発表会において「朝鮮陽明学をどう評価するか」を、(2)第7回研究発表会において「東アジアの近代化と儒教」を取り上げ、それぞれ海外の著名な研究者を招聘して、近代前夜の朝鮮儒教に対する理解を深めること、さらに(3)これまで交流する機会のなかった香港の優れた研究者と意見交換をすべく、香港でワークショップを開催することを予定していた。 (1)と(2)については、予想通り活発な意見交換や貴重な資料紹介等が行なわれ、充実した研究会を実施することができた。(1)については、中国儒教研究を牽引する陳来教授(中国・清華大学)と楊国栄教授(中国・華東師範大学)、および台湾儒教研究を牽引する李明輝教授(台湾・中央研究院)をお招きすることができ、中国儒教研究の潮流、および中国における朝鮮儒教研究の捉え方について活発な意見交換をすることができ、極めて充実した研究会を実施できた。また、(2)については、米原謙・元大阪大学教授をお呼びし、日本思想史研究の立場から各発表に対して貴重なコメントをいただくことができ、本研究の進め方についても貴重なアドバイスをいただくことができた。 しかし、(3)の香港ワークショップについては、2014年9月26日に発生した香港反政府デモ(「雨傘デモ」)の影響により、香港科技大学の黄敏浩教授が入試業務等の理由により開催できない旨の通知を受け取ったため、翌年に繰り越さざるを得なくなった。ただ、来年度の開催は万難を排して開催したい旨の連絡を黄敏浩教授よりいただいているので、来年度の開催に向けて緊密に連絡を取りながら準備をしていきたい。 総じて、国内共同研究メンバーの旺盛な個人研究の成果を研究会において吟味することができ、さらに海外の著名な研究者をお招きして率直な意見交換や議論ができたことは、本科研研究会の大きな成果であると思っている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究プロジェクトの最終年度であり、3つの研究計画を予定している。 1つめは、昨年度開催予定であった香港におけるワークショップを開催することである。海外研究協力者で香港科技大学の黄敏浩先生にご紹介いただき、香港における儒教研究の最前線を学べるようなワークショップを実施したいと考えている。 2つめは、この研究プロジェクトの集大成を飾るにふさわしい最終研究発表会を開催すること。具体的には、朝鮮研究の第一人者であり現在韓国成均館大学に所属していらっしゃる宮嶋博史先生をお招きして記念講演をしていただくとともに、通史としての朝鮮儒学史を概観するとともに、これまでの研究成果を通覧できるような研究会を準備したいと考えている。 3つめは、本研究プロジェクトの具体的成果としての出版物の刊行計画を立案することである。すでにいくつかの出版計画の打診があるが、具体的にどのような形で研究成果をまとめるかについて、共同研究者を含めた協議をして決めたいと思っている。
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