研究課題/領域番号 |
23242041
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
吉村 武彦 明治大学, 文学部, 教授 (50011367)
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研究分担者 |
加藤 友康 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00114439)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本史 / 考古学 / 墨書土器 / 古代史 / データベース |
研究概要 |
研究の基礎となる墨書土器に関する研究文献データベースは、大学図書館等の研究文献と報告書等を調査・収集して作成し、総計が1950点になった。2013年度の早い時期に、明治大学のホームページのデータベースを更新して公開したい。 墨書土器データベースでは、詳細なデータベースは、完成版として秋田県、岐阜県、山口県、鹿児島県、補訂版としては茨城県、宮崎県を、それぞれホームページにおいて公開することができた。現在、山形県・長野県が最終段階にある。さらに岡山(備前・備中)地域と広島県も作業中である。これらが完成すれば墨書土器研究は中国地方の基本的資料が整い、東日本との比較研究が可能となる。また、茨城県は協力研究者の川井正一氏と連携し、補訂版作成の筋道を立てた。連携研究員の市大樹氏(大阪大学准教授)の指導で、奈良県の平城京の詳細な墨書土器データベースの作成作業は、カードの作業を継続中である。平城京が完成すると、地域と宮都との墨書土器の比較研究が可能となる。 また、全国墨書土器データベース(簡易版)作成は、データ収集を継続して補訂作業を進行させている。詳細版から4項目のデータを摘出して、全国版データベースの更新をはかり、検索システムを構築中である。なお、文字資料を用いた地域研究については、現在、千葉県市川市域を対象に、国府・国分寺関連の研究を進めている。市川市史研究と連携して、下総国戸籍に関連する遺跡の研究を実施している。2013年度中にはまとめる計画である。 東アジアの視点からの研究は、中国の南京市博物館において墨書土器調査を実施した。南朝の墨書土器は、元博物館員の王志高氏によって、墨書土器研究と写真等を公表することができた。墨書土器研究の上で画期的である。また、安南都護府の所在地であるハノイで、墨書土器調査と関連遺跡の見学を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
墨書土器研究の文献調査が、前任担当者との引継が不十分であったため、博物館等における文献調査がやや停滞してしまった。ただし、年度途中で改善することができた。また、ホームページでの公開がデータベースのソフトウェアの関係で遅れている。今後は、データベースを統一して迅速に調査・公開が可能になるようにしていきたい。 墨書土器のデータベース構築は、2012年度は、長野県などでは報告書の悉皆調査からデータベース作成をはかったため、予想外の長時間を要することになった。調査報告書の悉皆調査は、現在の研究規模では困難であるため、今後は当該県における主要な墨書土器研究者との連携を強化し、奈良文化財研究所で公開している遺跡データベースから墨書土器掲載の調査報告書等を積極的に活用し、効率的に進行させることに方式を改めることにした。ただし、最終局面では、現地の埋蔵文化財センターなどでの確認調査が必要になるため、公開に至っていない県も少なくない。今後、データベース作成のため埋蔵文化財センター等に機動的に訪問し、詰めの作業の進行を早めていきたい。東北地方は、秋田県に続き、山形県が最終段階であるが、岩手県はできなかった。2013年度には、実施できるように準備している。 東アジアの視点からの研究は、中国南朝の研究を現地の王志高氏と連携することによって、端緒的な成果を得ることができた。ただし、中国全体においては、中国研究者の関心が弱く、まだまだ方向性をつかめていない。ベトナムにおける旧安南都護府関連の遺跡調査では少なくない墨書土器の存在を確認した。今後は、中国周辺地域の墨書土器に対する研究者の関心を強めていく必要がある。 科研費の研究は、猿楽町校舎で行ってきたが、3月に、新しく竣工したグローバルフロントに研究室を移動した。引っ越し作業と整理に研究外の時間を要することになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における研究目的を遂行するために、日本の墨書土器に関する文献の悉皆調査を実施しているが、引き続き研究文献目録を作成して公開する。この作業は、日本の墨書土器研究の全貌を知るために必要であり、作業を続けていきたい。 そして墨書土器データベースを構築するために、主にポスドクとRA(大学院博士後期課程院生からなる研究補助員)を組織して、謝金対象の学部生とともに、下記の具体的計画のように文献調査、資料収集、データ集成・入力の作業を続けていく。次に、東アジアにおける墨書土器と比較研究する視点から、中国・韓国等の墨書土器関係の研究文献を収集し研究する。特に古代中国関係の墨書土器の比較研究を重視し、中国古代史研究者の石黒ひさ子氏に依頼し、中国ではマイナーである墨書土器研究の現状を掌握するように努める。 墨書土器調査とデータベース作成の具体的な研究計画としては、①近畿、中部、中国、東北地方におけるデータベースが未完成地域のデータ集成と研究、②既存のデータベースの補訂作業、③墨書土器情報と文献のデータ入力とデータベースの公開、④日本・中国・韓国における墨書土器の使用・機能・意義についての比較研究、という4段階に研究を区分して、研究を継続していきたい。 第3年度の研究は、主として①と②のデータ情報の収集と集成が中心となり、データ集成が終了した地域から、③の作業を実施していきたい。④については、新たに中国研究者と連携して、墨書土器研究を進めていきたい。なお、各地域のデータ集成・研究は、連携研究者との協力を強めるとともに、各地域の研究者との連携を重視して進展させていきたい。本研究で得られた成果は、ホームページのほか、古代学研究所(明治大学における研究拠点)の紀要『明治大学古代学研究所紀要』や、公開の学術研究会・シンポジウムを開催して、広く発信していきたい。
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