研究課題/領域番号 |
23242048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福永 伸哉 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50189958)
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研究分担者 |
高橋 照彦 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (10249906)
菊地 芳朗 福島大学, 行政政策学類, 教授 (10375347)
橋本 達也 鹿児島大学, 総合研究博物館, 准教授 (20274269)
佐々木 憲一 明治大学, 文学部, 教授 (20318661)
中久保 辰夫 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30609483)
清家 章 高知大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40303995)
杉井 健 熊本大学, 文学部, 准教授 (90263178)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 古墳時代 / 威信財 / 地域関係 / 国際比較 / 団子山古墳 / 平原古墳群 / 国際情報交換 / 多国籍 |
研究概要 |
研究計画にしたがって(1)分担研究者各自に割り当てたテーマ研究、(2)フィールド調査、(3)研究集会、(4)国際発信の4つを柱として作業を遂行した。具体的な作業内容は以下の通りであり、その成果は後掲した論文、学会発表、著書などにおいて積極的に公表した。 (1)テーマ研究 各研究分担者が割り当てられた威信財研究、地域関係研究、社会構造研究、国際比較研究のテーマについて研究史の到達点を整理・分析し、12月開催の研究集会において報告・討論を行った。また、威信財研究にかんしては、資料集成図録『三角縁神獣鏡および共伴銅鏡集成』を作成、刊行した。 (2)フィールド調査 東北(福島県団子山古墳)、九州(熊本県平原古墳群)、畿内(大阪府待兼山古墳群)の3地域で発掘調査を実施した。 (3)研究集会 5月、6月、7月、9月、12月、3月の6回開催した。このうち、12月には黄暁芬氏(東亜大学大学院)、3月には禹在柄氏(忠南大学校考古学科)など、外国人研究者による研究発表を行い、古墳文化の国際比較について議論を深めた。また、12月の研究集会では「古墳時代中心周辺関係」をテーマに、総合的な議論を行った。 (4)国際発信 7月中旬に英国セインズベリー日本藝術研究所においてMartin Carver氏(ヨーク大学・Antiquity誌編集長)、Chris Scarr氏(ダーラム大学・Antiquity誌次期編集長)など、著名な研究者の参加を得て国際ワークショップを開催した。古墳時代をテーマとしたワークショップは欧州では初めてのことであり、日本古墳時代研究の現状を発信し、多くの議論を行うことができた。また、英国、韓国において顕著な墳丘墓遺跡の踏査および現地研究者との意見交換を行い、古墳時代の国際比較についてのアプローチを検討した。さらに別の事業と一部連携しながら、大阪府野中古墳の英文HPを作成・公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した研究の柱となる作業について、ほぼ計画通り遂行できている。とりわけ、古墳時代をテーマとした国際ワークショップとしては、ヨーロッパで初めてとなる英国ワークショップを成功させたのは大きな実績といえる。テーマ設定などはなお試行段階にあったため、一般研究者に広く開かれた研究会とはならなかったが、英国内の著名な研究者の参加を得て、古墳時代研究を国際的に展開していく確かな足がかりを得ることができた。また、H25年度に予定している米国ワークショップを計画するうえでも、有効なノウハウの蓄積となった。 研究成果の公表については、論文、学会、図書、シンポジウムなどさまざまな形で活発に行うことができた。フィールド調査の進行状況をブログ形式で発信することも特色のある取り組みと自己評価している。なお、他の事業との連携という形ではあるが、大阪大学が1960年代に実施した大阪府野中古墳の発掘調査の成果を利用して古墳時代研究のエッセンスを英文HPで発信したことは、全国的にも稀有な取り組みであり、本科研プロジェクトの目的の一つである国際発信の実践としても重要と考えられる
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今後の研究の推進方策 |
現時点でほぼ当初計画通りに進められているので、これを着実に継続することが推進策といえる。H25年度は、米国でのワークショップをボストン大学、ハーバード大学の2箇所で開催する予定であり、その成功のために周到な計画と準備を行う。国際的な議論や意見交換を通じて、古墳時代研究の国際化に有効な論点を絞り込み、分担者各自のテーマ研究に重ねる形で年度後半には総括論文の執筆計画を固める。これをもとにして、H26年度には英文の古墳時代総括論文集をまとめる。フィールド調査は、畿内において踏査あるいは測量を継続するが、作業の中心は出土資料や調査情報の整理分析へと移行し、H26年度の科研最終報告書に調査概要を盛り込めるようにする。 これまでの研究作業を通じて、アジア、欧米の研究者との交流が予想以上に深まっており、今後は本科研のプロジェクトをさらに発展させた「墳墓と社会関係の世界比較研究」のような国際共同研究を展望しつつ、グローバルな考古学研究者間のネットワークの構築につとめる方針である。
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