研究課題/領域番号 |
23242050
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
菱田 哲郎 京都府立大学, 文学部, 教授 (20183577)
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研究分担者 |
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
根立 研介 京都大学, 文学研究科, 教授 (10303794)
清水 昭博 帝塚山大学, 人文学部, 准教授 (20250384)
高 正龍 立命館大学, 文学部, 教授 (40330005)
田中 俊明 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (50183067)
堀 裕 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50310769)
上杉 和央 京都府立大学, 文学部, 准教授 (70379030)
井上 直樹 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80381929)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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キーワード | 古代寺院 / 仏教史 / 寺院史 / 仏教儀礼 / 寺院経営組織 / 日韓比較 / 韓国仏教寺院 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本年度は、古代寺院研究会を4月8日難波宮、5月6日芦屋廃寺、7月16日紀伊の古代寺院、8月19日河内六寺(柏原市)、12月9日丹比の古代寺院(堺市)、1月乙訓寺(長岡京市)で実施した。いずれの研究会においても、午前中に巡見をおこない、午後に研究発表、討議を実施し、考古学的研究と文献史研究を合わせておこなうことから、地域の中での寺院の役割などを深めることができた。とりわけ7月の和歌山では、バスを利用して5ヶ寺を見学し、立地の共通性や独自性を比較した。また、芦屋廃寺、河内六寺、丹比地域の寺院など、交通路との関係が重視できる例も多いので、考古学、文献史学に加えて歴史地理学的検討を重視した。 古代寺院に関する文献史料の抽出作業を実施し、また寺院の経営施設に関する考古資料の収集も進めることができた。そして、経営施設が明らかになっている枚方市九頭神廃寺について、過去の調査資料を再整理すること企画し、塔跡や金堂跡周辺調査区から出土した遺物の整理をおこなった。その結果、寺院の中枢部の状況を明らかにするデータを収集できた。 日韓比較として、8月30日から9月7日に韓国に渡航し、慶州、江陵、原州、扶余、益州などの仏教寺院を見学した。とくに調査中の寺院において、調査担当者と意見交換をおこなうことができ、儀礼や経営といった本研究の課題に即して、韓国寺院の調査成果を読み解くことを試みた。また、2月にはさらに検討を深めるため、公開研究会をおこない、韓国の寺院調査の成果、東アジアにおける仏教寺院の変容などについての発表を依頼し、多角的な討論をおこなった。 今年度も2月に枚方市が実施した市民向けのシンポジウムに菱田、吉川、上杉が参加し、主として交通路と寺院の関係を軸に研究成果の一部を披瀝した。また、研究成果を含む著作物も、研究代表・分担者それぞれにおいて、公表することができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
畿内の主要な寺院について、年間5回の研究会の開催を目標として取り組み、本年度は6回の研究会を実施することができた。また、いずれの研究会においても、地元の調査担当者を手引きに実地に検討をおこなうことができ、考古学、古代史、また歴史地理学や美術史といった異なる分野の研究者が参加することから、横断的総合的な検討をおこなうという所期の目的を果たしていると考える。そして、6回のうち1回は、和歌山地域の寺院を集中して巡見、検討をおこない、畿内の外側の寺院との比較に着手することができた。 資料収集については、文献、考古資料の双方について、調査補助員を雇用して進めることができた。古代史料収集については、かなり進んだと評価でき、あと1カ年で達成予定である。また、考古資料のうち、遺跡の情報の収集についてはおおおむね予定通りの進捗状況である。それに加えて、九頭神廃寺の遺物整理など、新たな課題にも取り組むことができ、予定以上に資料の集積が進んでいる。 日韓比較のための韓国調査も科研メンバーの多くが参加でき、20ヶ寺近い寺院を訪れることができ、慶尚道、江原道、忠清道など、広い範囲で寺院を巡見できた。そして、調査中の寺院も7ヶ寺を見学することでき、それぞれの寺院において韓国側の研究者との交流もおこなった。このように韓国においては、密度の濃い巡見をおこなうことができた。このことは、寺院における儀礼や経営といった当方の関心を韓国側の研究者と共有することにつながっている。その延長として、2月に韓国の研究者を招いて研究会を実施し、活発な意見交換をおこなった。 以上のように、研究計画通りに進めており、その成果も予想以上に大きいと判断している。市民への公表についても、自治体などが実施する講演会を利用する形で、本テーマの研究成果の一部を伝えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の通りに進めており、大きな問題はない。年間5回の研究会、畿内寺院と畿外の寺院との比較、それに韓国の巡見は、これまで通りに進めていくことが必要である。これまでの研究活動によって、内外の研究者との交流も幅広くできており、研究協力者として取り込みながら、研究の枠組みを広げていくことが重要である。古代寺院におけるソフトウェア面の重要性を訴えていくという目的も、このような活動が近道になると考える。 今後の課題としては、研究成果のとりまとめがあげられる。検討の対象とする寺院の選定も含めて、最終年度までに成果をまとめられるように、絞り込んでいくことが必要となっている。このことに加えて、収集した文献史料や整理した考古資料の印刷公表も平成26年度に前倒しできるように、推進していく予定である。 合計10名となる研究チームにおいては、いかに相互に連絡を保って進めるかが成否を分ける鍵となる。本研究においては、頻繁に研究会をおこなうことを通して相互に意見交換できるように努めてきた。これからも、連絡を密にできるよう、情報の共有を図りながら、また多くの研究協力者とも連絡を取り合って、検討を進めていく予定である。 今年度は、5カ年のうちの中間の3年目にあたっており、本年度末に、一応の中間まとめとそれの外部評価ができるように、とりまとめていくことを予定している。
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