研究課題/領域番号 |
23242056
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
関根 康正 関西学院大学, 社会学部, 教授 (40108197)
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キーワード | ストリート・ウィズダム / ネオリベラリズム / ローカリティ / 周辺化 / ヘテロトピア / デザイン / 精神分析 / アンビヴァレンス |
研究概要 |
ネオリベ的現代世界は未曾有の限界状況を呈し、自然災害と社会経済的人災が折り重なって現代人に襲いかかっている。そこでは、上からの力で下層へと周辺化された場所で悲惨の増幅が目撃される。その周辺化状況を内在的に把握する必要が「ストリート現象」の解明という本研究課題を設定させた。その課題に取り組む初年度の実地調査は、次のとおり各地で周辺化された場所に向かった。関根はチェンナイで「歩道寺院」に寄り添う家族の生き延び方の調査とロンドンの南アジア系移民地区の20年余にわたるヒンドゥー寺院建設実践について調査、野村は国家債務危機化のイタリア、ギリシャにおけるストリートウィズダムの調査、和崎はハノイにおいて観光化が凌駕する生活においても地域伝統を生かした民衆の能動的対応の知恵を活写、北山、南はニューヨークでの遊歩体験を通じて否定的なものの見せ方といった精神分析的視点のストリート研究への適用を探索、鈴木はキャンディの路傍の仏殿建造というストリート現象の基礎調査と地方都市長岡の市場の周辺化についての調査、小田は宮城・岩手で震災と津波の被災地の仮設住宅での生活空間再建の調査から生きられるホームにはストリートが欠かせない点を発見、ギルは放射能被爆による避難地区内の福島の飯館村を調査し被爆による地域の周辺化がすでに周辺化されていた村の崩れた共同性の現実を照射しさらに解体を導く模様を描写。総じて、周辺化された場所からの内在的視点は、そこはambiguiousではなく、ambivalentというべき矛盾したものが引き裂かれたまま共生する生の現実が<境界>ないし<ヘテロトピア>の特性を持っているという共通点を浮かび上がらせた。初年度のこうした探求は、この生の現実の抱える矛盾を排除差別することの誤謬を明らかにし、むしろその矛盾の共生は創造的生活を支持する基本デザイン原理として枢要だという視座を生み出すことに確かな見通しを与えるものになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
5年間の研究期間の初年度が完了した段階で、当初仮説的に持っていた論点が既にいくつも現実の実地調査によって確認できる見通しが得られただけでなく、多様な地域の現実において周辺化された場所の共通的な構造が豊かな多様性と共に見え始めた。また、科研での調査成果報告と問題意識の共有と深化の場として、国立民族学博物館の共同研究会の設置が認められた。それが効果的に機能し始めていることも研究の進展に寄与している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに進めていくことで、十分な成果が生まれる見通しが立った。したがって、予定通り、今後の4年間を、研究代表者、連携研究者、研究協力者の現地調査の継続とデータの蓄積にあてる。ただし、計画期間の後半はデータの解読や統合とその相互交流に時間を割くようにする。
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