研究課題/領域番号 |
23243050
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 准教授 (80361856)
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研究分担者 |
伊藤 恵子 専修大学, 経済学部, 教授 (40353528)
楡井 誠 一橋大学, 商学研究科, 准教授 (60530079)
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70423043)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 企業動学 / 経済成長 / 生産性 |
研究概要 |
金・権の研究では、企業レベルの売上高成長率の変動は激しい一方で、マクロ経済の変動は安定していることを発見し、なぜこのような乖離が生じるかについて分析した。個別企業の変動は激しいが、正のショックでも負のショックでもそれが経済全体に波及する力は以前よりずっと弱くなっていることを示した。また、個別企業に起きたショックが他の企業、産業や経済全体に波及しにくくなっている理由としては、生産拠点の海外移転(「産業の空洞化」)による国内企業間の相互依存の弱まり、生産技術の専有性の深化、企業間ネットワークを通じたスピルオーバー効果の低下にあることを示した。次に楡井の研究は、各企業の設備投資が不完全競争による総需要外部性を通じて相互補完性をもつモデルを用いて、各企業の独立な生産性ショックがマクロレベルの振動を引き起こすメカニズムを解析し、マクロ振動の確率分布を導出した。また、このメカニズムを動学一般均衡モデルに導入し、生産物価格硬直性と設備投資の不可分性のもとでは、マクロ生産性ショックを仮定せずに各企業のショックと景気循環の振幅の間の相関関係を再現できた。最後に、伊藤・加藤の研究は新規参入の促進は既存事業所の退出確率を高めることが明らかになったが、これは、非効率的な既存事業所が効率的な新規事業所に取って代わり、資源の効率的な配分へと繋がる可能性が高いことを示唆する。一方、大規模事業所の参入が必ずしも既存事業所の退出を促すとはいえないことから、大規模参入を制限するような規制の意義についても再検討する必要があることを示している。また、新規参入の促進が結果として、産業・地域の雇用成長へと繋がる可能性も確認されたことから、新規参入をいかに促進させるかが重要な政策手段であることを示している。以上のような研究によって、日本におけるミクロ単位の行動とマクロ経済の相互作用の程度を理論的・実証的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年と同様に、国内外の研究者を招いて、企業動学研究会を7回開催した。分析に必要とする『工業統計調査』、『企業活動基本調査』、『海外事業活動基本調査』などの政府の個票データを申請して、接合作業を進め、分析用データベースを構築した。作成したデータベースを利用して分析を進めているが、データベースの整備に時間を取られ、一部の研究が予定より遅れている。しかし、大部分の研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
入手した政府個票データや金融関連データ、民間調査会社等の提供する企業データを接合して分析を継続して行う。日本のデータベースを用いた分析を進めると同時に、中国や米国の企業のデータベースを購入し、企業動学のパターンとその決定要因を国際的な比較分析が可能な形で整備する。理論チームは、資本と労働の非効率な資源再配分が日本の企業動学を如何に不健全な状態にし、それによって日本のマクロ経済が低迷したかについて定量的に分析可能な理論モデルを構築する。この理論モデルに基づき、生産性チーム、国際化チームと金融チームは、整備されたデータベースを用いて実証分析を行う。昨年と同様に、CAEDカンファレンス、Society for Economic Dynamicsの学会等に参加し、各チームの研究結果を報告する予定である。さらに、研究者を養成するためにポスドクや大学院生のRAを採用し、研究を円滑に運営するだけではなく、教育も積極的に行う。
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