研究課題/領域番号 |
23243070
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
近藤 克則 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20298558)
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研究分担者 |
山崎 喜比古 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (10174666)
近藤 尚己 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345705)
稲葉 陽二 日本大学, 法学部, 教授 (30366520)
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
中川 雅貴 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 研究員 (80571736)
三澤 仁平 立教大学, 社会学部, 助教 (80612928)
鈴木 佳代 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 主任研究員 (90624346)
引地 博之 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 主任研究員 (00711186)
岡田 栄作 日本福祉大学, 健康社会研究センター, 主任研究員 (70711183)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2016-03-31
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キーワード | 社会的排除 / ソーシャル・キャピタル / 社会疫学 / 格差 / 国際研究者交流 / 米国 / 国際情報交換 / 米国:英国:韓国:フィンランド |
研究概要 |
1.既存データを活用した研究 2010年に実施した約10万人の高齢者調査データを用い、義歯利用割合に所得間格差が見られること(Matsuyama, et al, 2013)、市区町村の自殺率とソーシャル・キャピタル(人々のつながりの豊かさ)関連指標との間に相関が見られること(芦原ほか,2014)、子供時代に豊かだったと答えた者ほど高齢期のIADL自立の割合が高く、戦前期に幼少期を過ごした世代では栄養状態が良かった身長が高い者ほどIADL自立している確率が高いこと(Fujiwara, et al, 2013)を報告した。 一方、well-being格差の是正策を探るため、社会参加、特に役割を持って参加していることが3年後のうつ抑制につながること(Takagi, et al, 2013)、その一つの経路として、サロン参加者はそこで健康情報を入手していること(大浦,2013)などを明らかにした。 2.2013年度の規模調査の準備・実施 2003年度以降、介護保険者(市町村・広域連合)が介護保険事業計画を立案するための調査を兼ねる形で調査を共同実施してきた。2010~11年度には、他の研究費や保険者の調査費用も得て、 31市町村の高齢者約11万人から回答を得ることができた。2013年度には、これらの保険者に再び協力を得てパネル調査を行うため、第6期介護保険事業計画の立案に向けた調査が必要となるタイミングに合わせて大規模調査を秋に行うべく準備を進めた。10月から12月にかけ3週間ずつ3期に分けて実施、25保険者30市町村で19万5290票を配布し、13万8293票を回収した(回収率70.8%)。保険者の関心の高い日常生活圏域毎の介護予防ニーズと資源の分布を自治体にフィードバックするための介護予防政策サポートサイトhttp://www.yobou_bm.umin.jp/を拡充した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科学研究費補助金(基盤研究A)で取り組んだ文献レビューは、書籍(近藤克則編:健康の社会的決定要因-疾患・状態別「健康格差」レビュー.日本公衆衛生協会,2013)としても出版し増刷となっている。 実証研究では、AGES(Aichi Gerontological Evaluation Study,愛知老年学的評価研究)プロジェクトの既存データを用いた分析は順調に進展し、AGESを母体に発展させたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトの関連論文(他の研究助成によるもの、書籍の分担執筆も含む)を含めると3年間に約50本となり、その半分は査読を経て英文誌に掲載されるに至っている。JAGESプロジェクトのこれら一連の成果は国際的にも評価され、WHOや韓国、ニュージーランドで開かれた国際会議で発表の機会を与えられたのに加え、2013年度から5年間の研究助成を米国NIH(国立衛生研究所)から得られることにつながった。 さらに2013年の大規模調査についても、25保険者30市町村の協力を得て19万5290票を配布し13万8293票を回収でき、回収率は期待を上回る70.8%に達した。さらに厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「介護予防を推進する地域づくりを戦略的に進めるための研究」(H25-長寿-一般-003)で平行して実施した日常生活圏域二ーズ調査の分析支援には、約120市町村と研究協定を締結してデータ提供を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
1.既存データの分析 2003年度以降、保険者と共同実施してきた調査の既存データを用いた分析を進める。また2010~11年調査の高齢者約11万人をベースラインとし、追跡データの提供を受けられる自治体に居住する高齢者を対象とした2013年までの縦断データを構築し分析を進める。健康寿命や要介護リスクなどwell-being(幸福・健康)が損なわれるプロセスにおいて、社会的排除がどのように関与しているのかを横断分析と縦断分析を組み合わせて検討を進める。一方、well-being格差の是正策を探るため、社会参加による社会的サポート・ネットワークなどソーシャル・キャピタル関連指標やbuilt environment(建造物環境)が健康(関連行動)とどの程度関連しているか、格差の緩和に寄与しうるのか、その関連の大きさはソーシャル・キャピタル指標の種類間で同じなのか異なるのかなどの検討を進める。 2.2013年の大規模調査データの分析 2013年調査には全国30市町村の高齢者約14万人の調査データを収集できた。これを用いて、日常生活圏域毎の介護予防ニーズと資源などwell-being(幸福・健康)格差の実態や関連要因の検討を行い、その結果を自治体にフィードバックする。また2010~11年度の31市町村約11万人の調査結果から知見の再現性の検証も行う。このうち24市町村は2度の調査の両方に協力が得られたので約3年間隔のパネルデータとし、2013年のwell-being(幸福・健康)関連指標をエンドポイントにし,2010年データを曝露因子として、well-being(幸福・健康)の向上や低下の予測因子を解明し、社会的包摂がwell-being(幸福・健康)の向上にどのように寄与しうるのかを解明したい。
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