研究課題/領域番号 |
23243071
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
楠見 孝 京都大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (70195444)
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研究分担者 |
道田 泰司 琉球大学, 教育学部, 教授 (40209797)
MANALO Emmanuel 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30580386)
林 創 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (80437178)
信原 幸弘 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10180770)
乾 健太郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60272689)
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キーワード | 批判的思考 / 科学リテラシー / 科学コミュニケーション / 大学教育 / 情報信頼性 / 神経科学 / メディアリテラシー / インターネット |
研究概要 |
本研究の目的は、21世紀に生きる市民として、マスメディアやインターネット上の科学やリスクなどに関する情報の信頼性判断をし,活用するための高次リテラシーと批判的思考力を評価し、育成方法を検討することにあった。研究課題は3つに分かれた。課題1「市民リテラシーと批判的思考」では,(a)市民と大学生を対象に調査をおこない,批判的思考態度が幸福感に及ぼす影響を明らかにした。さらに,批判的思考が専門領域における熟達化によって変化することを示した。(b)批判的思考と高次リテラシーを育成する教材と教育プログラム,評価ツールを作成した。これは教育実践や研究において意義が大きい。そして,大学の授業において実践をおこない,学習者間インタラクションの変化と,批判的思考スキル,質問力の向上を明らかにした。(c)批判的思考態度とスキルに関して,日本の中学・高校・大学生とニュージーランドの大学生,ブータンの中学・高校生との比較調査をおこない,差異を明らかにした。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では、高次リテラシーとしての神経科学リテラシーを取りあげ、その育成のための教材を作成し、ゼミ・講義で教育実践を行った。さらに、批判的思考の基盤を神経科学に基づいて実験的に検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」は、市民が、情報をインターネット上でいかに探索し、その情報の信頼性をいかに評価するかを、福島第2原発事故に伴う食品の放射能汚染のケースに基づいて,大学生と市民を対象としたインターネット調査とインタビュー調査で検討した。そして批判的思考態度がネットリテラシーを高め,メディアの情報信頼性評価を低下させることを明らかにした。このことは,コミュニケーションの発受信を考える上で重要である。さらに、情報の信頼性判断を支援する関連情報提示システムを用いた拡張思考環境の開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主な理由は2点である。第1に,批判的思考と高次リテラシーを育成するための教材,価ツール,教育プログラムの作成は順調に進んでいるため。第2に,市民,大学生を対象とした複数の調査により,批判的思考と高次リテラシー,および情報信頼性評価との関連性を検討するためのデータの収集ができ,今後の継続調査の土台ができたためである。
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今後の研究の推進方策 |
第1に,批判的思考と高次リテラシーを育成するための教材,評価ツール,教育プログラムを用いて,授業実践を進めながらその評価をおこない,必要な改訂を加えること。第2に,市民,大学生を対象とした複数の調査を継続し,批判的思考と高次リテラシー,および情報信頼性評価との関連性の変化を,学年進行,福島第1原発の事故後の時間経過による変化を明らかにすること。第3に,批判的思考の神経基盤の研究,拡張思考環境の開発研究をさらに進めることである。
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