研究課題/領域番号 |
23243076
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕之 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (40243977)
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研究分担者 |
REMIJN Gerard B. 九州大学, 国際教育センター, 准教授 (40467098)
須長 正治 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (60294998)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 順応 / 残効 / 視覚 / 知覚 / 錯視 |
研究概要 |
H24年度は、錯視と残効の関係を中心に研究を行なった。 1.オップアートであるEnigmaは、何かがさらさらと図の中を流れるように見える運動錯視である。原因については多くの議論がある。本研究では、運動残効を利用することにより、相対運動検出器の自発的発火とその分凝が錯視の原因であることを見出し、モデルを作った。 2.明るさの錯視である、明るさ対比、glowing 効果、checker shadow錯視などに、残像が生じるかどうかを実験的に調べた。明るさ対比においては、対比を起こしている要素の残像が、残像における対比を起こすことがわかった。glowing効果そのものは残像を作らないようであるが、錯視の明るさと残像の暗さには相関が見られた。checker shadow錯視では、残像の明るさに錯視が影響を及ぼしているように思えるが、明るさ対比の影響もあるのでさらに検討が必要である。 3.回転運動をする対象を見つめた後に、瞬きをしたり、対象のテクスチャを別のものに入れ替えたりすると、反対方向にジャンプする一種の運動残効のような錯視を起こすが、これは人間の運動の知覚特性に由来するもので、必ずしも運動残効が原因ではないことがわかった。この現象はアメリカの学術ジャーナルPNASに発表された。 4.順応を起こす視覚ディスプレーとして、液晶やCRTではその特性上難しい場合があるので、最新の有機ELディスプレーを導入し、次年度に使う実験装置としての検討を行なった。低輝度領域での特性や画面の均一性、時間特性等、十分に精密な実験に耐えられることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験はおおむね順調に進展しており、成果も出始めた。上記の研究実績の概要にも記した通り、一部の実験結果は海外の研究者と共同で、Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載を果たしており、研究の水準も高く保たれている。Enigmaの研究もよいモデルが得られ、満足のいく研究になっている。実験に必要な新たな道具(有機ELディスプレー、視野変更メガネ)の導入と試験も終え、本格的にデータをそろえる準備ができた。このディスプレーの評価そのものも論文として発表する予定である。論文の執筆のタイミングが合わず、今年は多くの論文をジャーナルに掲載することができていないが、次年度4月以降に何本かの論文をまとめてサブミットする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
計画書にあった、顔の表情への順応の両眼間転移の実験が、海外の研究者によって先に行われたことが判明したため、計画の変更を余儀なくされている。表情以外の顔の特性について両眼間転移の実験を行う方向で変更を加えていく。Enigma錯視の研究は、ハイインパクトなジャーナルへの掲載を狙えるものと考えており、さらに精緻な論理性とデモンストレーションを加えて投稿したいと考えている。他の実施計画については、細かい修正を施しながら、おおむね計画書に記載した方向で研究を進めていけるものと考えている。
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