研究課題/領域番号 |
23243077
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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研究分担者 |
松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720)
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キーワード | 前頭前野 / 意思決定 / モデルベース / 思考 / 目標指向性 |
研究概要 |
意思決定には、モデルフリー型意思決定と前頭前野機能に依存するモデルベース型がある。後者は、熟慮的判断の基礎と考えられており、推論可能性、顕在性、目標志向性を特徴とする。この課題は、サルを使った神経生理学実験とヒトを被験者とするfMRI実験により、熟慮的判断の神経メカニズムを明らかにしようとするものである。以下、平成23年度に行った研究の成果を記す。 1.推論課題遂行中のサルの前頭前野から単一ニューロン活動の記録を行った。前頭前野のニューロンは、刺激と関連する報酬の情報をコードするのに、カテゴリー的な処理を行っていることを明らかにした。また、前頭前野、特にその外側部のニューロンのこのような特徴が、3段論法的推論を可能にしていることも明らかにした。その成果は北米神経科学学会大会と日本神経科学学会大会で発表した。 2.fMRI法を使って、報酬の予測に関連する脳活動を調べた。その結果、正の報酬の予測に関しては内側前頭前野が、負の報酬予測に関しては外側の前頭前野が関与していることが分かった。また、この時の脳活動は、刺激と連合した客観的な価値ではなく、その時々の被験者の主観と相関していた。その成果は、日本心理学会大会で発表した。 3.サルに、コストベネフィット課題を学習させ、その行動分析を行った。サルは、大きなコストを払って獲得した報酬の方を、小さなコストで得られた報酬よりも過大評価するという傾向が見られた。今後、この課題遂行中のサルの脳活動を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サルの単一ニューロン活動の記録実験(推論課題)とfMRIを使った報酬予測実験(正の報酬)については、十分なデータが集まったため、平成24年度中に国際誌に成果を発表できる予定である。コストベネフィット課題については、最適な実験パラメータを見出すのに時間がかかり、サルの訓練が予定より少し遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
推論課題(サル)については、当初の予定通りに実験と解析を進めて行く予定である。コストベネフィット課題(サル)については、行動実験での結果をより明確にするために、課題の変更などが若干必要になるかもしれない。fMRIを使ったヒトの実験では、正の報酬を使った実験に加え、負の報酬を使った実験を被験者の数を増やして行う予定である。この成果をもとに、前頭前野ネットワークが持つモデルベース機能のモデルの実態を明らかにする課題の開発を行いたい。
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