研究課題/領域番号 |
23244003
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
織田 孝幸 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (10109415)
|
キーワード | 保型型式 / 不連続群 / Lie群上の球関数 / 多変数超幾何関数 |
研究概要 |
早田孝博氏(山形大学)との、種数2の Siegel モジュラー群に関するGottschlingが構成した基本領域の stratification の研究で、0次元のセルの数え尽くしが完成し、論文はExperimental Math. に出版された。その後、4次元のセルなど、他の次元のセルを研究している。特に、これらに関しては微分幾何学的な部分多様体としての性質も調べ初めている。最初の試みは、アラビアのオマーンの首都ムスカットで行われた研究集会で発表した。 SU(3,1)の「大きな離散系列表現の行列係数の動径成分」を明示的に求める計算は、途中、錯覚があって計算に行き詰っていたが、北里大学の宮崎直氏が正しい計算を見出し、古関春隆(三重大学)、早田孝博(山形大学)、宮崎直と、織田の4人の共著論文として完成しつつある。 駒場における、月例セミナー「保型型式の整数論」では、太田雅己氏(東海大学名誉教授)の講演など、重要な研究成果に触れることができた。 8月上旬に玉原セミナー・ハウスで研究集会を行った。通常の保型型式の話の他、微分幾何学の研究者の方、田崎博之氏(筑波大学)・田中真紀子氏(東京理科大学)に、部分多様体の研究動向を話していただいた。これは最初に書いた、高次元セルの研究に生かしたいが、また課題が多い。その他、富士箱根ランド行われた、恒例のサマー・スクールの参加者(若い人)の旅費をサポートした。3月には、ミニ集会を行い、特にRiemann Zeta関数研究で高名なセルビアのIvic教授など複数の外国人研究者に講演をしていただいた。 繰り越し分では、コロラド大学の Eric Stade 教授を招き、玉原セミナーハウスで行われた、多変数超幾何関数の集会(同僚の大島利雄教授が主催)に協力した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本領域のセルの数え上げは、0-セルに関しては、幸運もありほぼ初期の目標を達成できた。SU(3,1)の大きな離散系列表現の行列係数の研究は、錯誤による遅延はあったが、これも思わぬ新たな協力者を得られ、事実上完成した。これらは具体的な成果である。 この成果には、それぞれ次の問題を齎すという付録がついている。研究としては筋のいい流れと思う。
|
今後の研究の推進方策 |
多変数、高次元の数学的な対象を扱う研究の常として、問題の量的な複雑は、いわばどの問題も「重い」という困難は避けがたい。我々は、正しい理論的な見通しで、易しいものから順に計算するという「王道」を進んできたのであるが、この方向は今後も堅持する。 計算機の使用をもっと積極的に考える。基本領域のセルの結果はこれなくしてできなかった。 あと若い研究者にも、我々の主題の魅力を伝え、協力者として巻き込んでいきたい。
|