研究課題/領域番号 |
23244003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
織田 孝幸 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (10109415)
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研究期間 (年度) |
2011-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | Automorphic forms / spherical functions / fundamental domain / Whittaker functions / hypergeometric functions |
研究概要 |
種数2のSiegel上半空間のSiegelモジュラー群に関する基本領域は28枚の、実5次元の超曲面によって限られている(50年ほど前のGottschlingの研究)。我々は、これらが、0次元の交叉を定めている部分を既に前年度までの研究で決定した。いま新たに4次元の交叉(二つの超曲面の交わりで自明でないもの一部)になりうるものを調べた。未だ事例研究に留まるものの、全測地的でない部分多様体である実例や、1次元の交叉にしかならないものなど、興味深い実例が得られた。結果は、アラビアUAEのスルタン国オマーンの首都Muscatでの研究集会の報告集の中でSpringer社から出版予定である。非コンパクトLie群、SU(3,1)の大きな離散系列の行列係数の明示公式の論文を完成した。これまでの共著者、早田孝博(山形大学)、古関春隆(三重大学)に加え、宮崎直(北里大学)の協力を得た。 広中由美子は、アメリカのエール大学のピヤチェスキー・シャピロ教授の記念集会に出席し講演してきた。代表者は日本学術振興会での公務の日程と重なり、残念ながら参加できず。我々の分野での恒例の長野県での集会に参加する、外国人研究者2名の旅費をサポートした。マンハイム大学の Boecherer教授が、東京大学・数理科学研究科の客員教授として長期滞在なさるのを側面から旅費等でサポートした。 織田は数式処理の現状などを知るためにイタリアのTriesteのICTPに滞在し、マックス・プランク研究所のDon Zagier教授と有益な討論を行った。モンゴル国立大学の研究者G. Bayarmagnai教授と、SU(2,2)の球関数の研究を進めた。 われわれのLie群の上の球関数は超幾何関数の研究の特別な場合とみなせる。折に触れて研究上の交流があるロシアのBruno教授の訪日旅費と東京大学数理科学研究科の白石准教授の旅費のサポートも行った。Colorado大学のEric Stade教授とのWhittaker関数周辺の共同研究も継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本領域に関する研究は、(後知恵であるが)さらに新たな方向性が見えた。この途中で、当年度の事例研究は、大きな役割を果たした。「新たな方向性」は、有界対称領域の極小部分多様体の実例を構成する、という視点である。階数が2以上の古典領域には、現時点で殆ど過去に研究がない。 Lie群上の球関数の研究は、途中の段階では、まとまった結果が出ないので、成果を説明するのは、多少苦しいところがある。25年度の時点で、プレプリントであった長い論文(SL(n,R)の主系列表現のWhittaker関数の論文、石井卓氏との共著)が、26年1月の時点で出版された、など成果は上がっていると思う。 SU(2,2)の球関数の共同研究などで、モンゴル国立大学のBayarmagnai氏との共同研究も少しづつ進展している。ヴベクトル値の球関数の研究は、計算時間を食う。
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今後の研究の推進方策 |
1) IV型領域の極小多様体を調べる。そのために、まず第2基本形式の明示公式を計算する。 2) SL(n,R)の主系列表現の行列係数を利用して、c-関数を決定したい。 3) 同じLie群の同じ表現の、別の実現・別の模型に対応する各種球関数の公式をなるべく統一的な公式にまとめる。 4)モジュラー部分多様体のGreen currents の研究を深化・進化させる。代表者は、Gillet-Soule'流のGreen currentの構成に納得していない。より自然な構成でないと、「算術交点理論」も言葉だけで終わる。難しい主題であるが、この方向には大きな重要な問題がある。 いずれも、単年度では終結しない可能性が高いが、代表者にはある程度見通しがある。
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