研究課題/領域番号 |
23244008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐伯 修 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30201510)
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研究分担者 |
大本 亨 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20264400)
與倉 昭治 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (60182680)
岩瀬 則夫 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (60213287)
鎌田 聖一 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60254380)
佐久間 一浩 近畿大学, 理工学部, 教授 (80270362)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 可微分写像 / 特異点 / 特異ファイバー / 同境群 / 実多項式写像芽 / 配置空間 / 国際研究者交流 / ブラジル:フランス |
研究実績の概要 |
写像の特異点論を,大域的観点,幾何構造付きでの観点等の新たな観点から見直し,数学の現代的潮流の中での特異点論の新たな展開・発展の様々な方向性をさぐることが大きな目的である.そのため平成26年度は,境界付き3次元多様体から平面への安定写像の特異ファイバーについて山本卓宏氏と研究を行い,その分類をもとに,特異ファイバーの普遍複体のコホモロジー群を決定し,境界付き曲面上のある種のモース関数のなす同境群が非自明であることをはじめて証明することに成功した.また,こうした特異ファイバー理論を多変量データ解析とその可視化に応用し,そうしたデータの微分位相幾何的な特徴抽出の際の特異ファイバーの同定に使えることを示し,コンピュータサイエンスの専門家と共同研究を行い,はじめてユーザーインターフェイスを試作するなど、その成果の社会への還元を目指した.また,実多項式写像芽の研究をブラジルの特異点論研究者と共同で行い,6次元から3次元への多項式写像芽で非自明なものがあるか,という40年来のMilnorの古典的問題を肯定的に解決したほか,Milnor束が球面のブーケとホモトピー同値であってなおかつ可縮でない具体例を構成することにもはじめて成功した.さらに,特異多様体の特性類の研究も進め,特にモチビックHirzebruch classについて詳しく調べたほか,こうした特性類をThom多項式との関連の観点からも研究した.また平面間の余階数2の特異写像芽の分岐図式をある程度決定し,その結果を特異点の幾何学に応用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度に予定していた研究については,ほぼ予定通り,もしくはそれ以上に進行している.特に,実多項式写像芽を結び目理論の観点から研究し,微分トポロジーにおける手法を駆使して,ある種の埋め込みのなす空間がユークリッド空間の点の配置空間とホモトピー同値となることを突き止めることで,40年来のMilnorの未解決問題に終止符を打つことができたのは非常に大きな成果であった.また,境界を持った多様体からの可微分写像の特異ファイバーについて,世界ではじめて研究を行ったほか,境界上で良い振る舞いをするモース関数のなすある種の同境群をはじめて定義し,それが非自明であることを我々の特異ファイバー理論を用いて示すことができたことは,こうした研究対象が大域的特異点論において重要な対象であることをはじめて示すものとなっており,今後につながる大きな成果である.さらに,そのデータ可視化への応用については,当初は予期していなかった意外な成果へとつながっており,今後の発展に非常に期待が持てる.特に,その数学的研究への応用が見込まれており,今後はこうした方面の研究も進めていく計画である.以上のことから,当初の計画以上に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り,多様体の大域的構造と写像の特異点について(特に,可微分構造の「差」の代数的表現について),多様体の同境理論に基づいた有限型不変量・量子不変量の定式化について,特異Lefschetz 束構造の変形理論の展開について,混合多項式の特異点について,特異多様体の特性類について,特異点・特異ファイバーの消去のためのホモトピー論的障害について等,研究を進めてゆく.特に,埋め込み・はめ込みリフトの存在・非存在と可微分構造の差の関係について重点的に研究を進めて行く予定である.また,特異Lefschetz束を用いた4次元多様体の不変量についても,特異点論的観点から研究を進めて行く.さらに境界付き多様体上の安定写像の特異ファイバー理論のデータ可視化への応用については当初から予期できなかった進展があり,こちらについても研究成果の社会への還元を目指して研究を発展的に継続してゆくほか,特異ファイバーの数学的研究の新しい形を模索してゆく.
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