研究実績の概要 |
カイラル共形場理論は2次元の場の量子論で無限次元の対称性を持つものから生じ,さまざまな立場の数学者や理論物理学者によって盛んに研究されてきた. 頂点作用素代数と(作用素環の)局所共形ネットはカイラル共形場理論を数学的に厳密に扱うための二つの代表的な枠組みであり,両者の間の様々な類似性はこれまで多くの研究者によって調べられていたものの,直接的な関係は見つかっていなかった.申請者は,Carpi, Longo, Weiner と共に,強局所性という条件を付ければ 頂点作用素代数から局所共形ネットを構成することができ,この局所共形ネットから元の頂点作用素代数が復元できることを示した. さらに共局所性が成り立つための簡単な十分条件も示した.これは 十数年来の懸案を解決するものである.さらに頂点作用素代数としての自己同型群と局所共形ネットとしての自己同型群が同じであることも示した.この結果は,(すでに申請者とLongoによって分かっていた)ムーンシャイン頂点作用素代数を含め,ベビー・モンスター群を自己同型群として持つ場合など,多くの例に適用でき,これまでに知られていた例の大半をカバーするものである. また,物質のトポロジカル相の間の gapped domain wall というものが物性物理で研究されているが,その数学的定義を与え,これについての2015年のLan, Wang, Wenの予想は正しくないことを示した.
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