研究課題/領域番号 |
23244021
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾中 敬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30143358)
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研究分担者 |
金田 英宏 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30301724)
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キーワード | 宇宙物理 / 光学赤外線天文学 / 赤外線衛星観測 / 星間物理 / 物質循環 |
研究概要 |
本年度は大マゼラン雲のあかり衛星観測の赤外線スリット分光データの詳細解析を行った。あかり衛星は2.5ミクロンから13ミクロンまでのスペクトルを同じ領域で取得できる初めての装置を搭載しており、この機能を利用して、まず大マゼラン雲中の分子雲から星生成領域までの広い領域の赤外線未同定バンドの相対変化を解析した。この結果、中間赤外線のカラーの変化が輻射場強度の指標になるという従来の結果に加えて、未同定バンドの強度比変化に基づき輻射場スペクトル変化も伴っていることを初めて明らかにした。さらに、分子雲と比較し、電離ガス内で未同定バンドのいうちの最も短い波長の3.3μmバンドが減少していることをつきとめ、電離ガス内ではサイズの小さいバンドキャリアが選択的に破壊されている観測的証拠を初めて得た。3.3μmバンドはSpitzer衛星では観測できない波長帯に存在し、この解析によりあかり衛星の分光データの重要性を示す事ができた。次に大マゼラン雲中の超新星残骸N49のあかり近赤外線分光データの解析を行い、超新星残骸で3.3μm未同定バンドを初めて検出した。この結果は、超新星残骸ではバンドキャリアが破壊されるという理論的予想と矛盾するもので、むしろ、サブミクロンダストの破壊によりバンドキャリアが生成される可能性を示した初めての結果である。また系外銀河の近赤外分光データの解析を進め、系外銀河中でのH_2O,CO_2氷の性質、あるいは銀河風中での未同定バンドキャリアの振る舞いを明らかにした。さらにあかり衛星の近・中間赤外線カメラの画像データの評価を行い、空間分解能を改善する手法を検討している。これらのあかり衛星データの解析と平行して、ハーシェル衛星を用いてダストの変成を明らかにする近傍銀河、超新星残骸、及び銀河面の3つの観測計画を策定し、公募観測として提案し、いずれも採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
あかり衛星データの空間分解能を改善するための基礎データの導出を終了し、改善する手段の検討も十分に進んでいる。これと平行して、分光データ解析も順調に進み、新しい科学的知見が得られている。また、ハーシェル衛星の観測計画の策定を行い、観測提案が採択された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、あかり衛星の分光データの有効性が証明された。今後は、大マゼラン雲の結果の一般性を調べるため、銀外面および系外銀河について、あかり衛星データだけでなく、Spitzer衛星のデータを合わせて赤外線未同定バンドの研究を進め、バンドキャリアの星間空間内での変成の様子を解明する。これと平行して、提案が採択されたハーシェル衛星による観測データ解析の準備を進める予定である。
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