研究課題/領域番号 |
23244021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾中 敬 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30143358)
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研究分担者 |
金田 英宏 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30301724)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙物理 / 光学赤外線天文学 / 赤外線衛星観測 / 星間物理物質循環 |
研究概要 |
本年度はあかり衛星で行った大マゼラン雲の撮像、分光サーベイデータの解析を中心に研究を進めた。この結果、3.2, 7. 11, 15, 及び24ミクロンの波長での点源カタログの作成に成功し、全体でおよそ65万個の点源についての上記5バンドのフラックスをまとめた。このデータを詳細に解析した結果、あかり衛星のもつ3.2ミクロンバンドは、氷の3ミクロンの吸収に敏感で、このバンドデータを用いることにより、氷の吸収を示す生まれたての星を効率的に抜き出すことができることを示した。また同時に行った近赤外線分光サーベイのデータ解析を行い、大マゼラン雲内の2000個の天体について2から5ミクロンのスペクトルカタログを初めて作成した。カタログに含まれる天体の多くは進化末期の星であるが、若い天体も含まれており、上記撮像カタログから予想された氷の吸収が分光データからも確認することができた。いずれのカタログも大マゼラン雲の研究に大きなインパクトのあるデータベースであり、特に銀河内の物質循環の研究に大きく貢献することが期待される。これらのカタログは全世界の研究者に公開するとともに、ウェブによる発表も行った。 これらの大マゼラン雲のデータ解析と平行して、あかり衛星による近傍銀河のデータ解析も進めた。このうち特異銀河NGC2782においては、2つの銀河衝突により生じたとみられる構造が7, 11ミクロンでみられた。この2つのバンドは銀河中に存在する星間有機物、多環式芳香族炭化水素(PAH)の輝線バンドに敏感であり、PAHの分布を示すものと考えられる。一方この構造は中性水素の輝線がみせる構造ともよs句一致し、衝突により水素ガスとともにPAHもはぎ取られている可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大マゼラン雲を含むあかり衛星による近傍銀河の観測データ解析は予定とおり順調に進み、大マゼラン雲については、撮像、分光の2つのカタログの作成が終了している。いずれのカタログも銀河内の物質循環の研究の基礎となるデータベースとして有効なものであることも確認できている。いずれのカタログもデータを全世界に公開し、またカタログについての論文も査読しに発表している。これらと平行して、あかり衛星による撮像データの詳細解析も進めており、ウェイブレット法を用いてノイズを軽減させることで、データの質の向上にも成功している。一方ハーシェル衛星による観測は、観測のスケジューリングが多少遅れたものの、平成25年3月までにはすべて予定とおり終了し、データ入手し、こちらの観測データ解析の準備も整えている。
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今後の研究の推進方策 |
入手したハーシェル衛星データの解析にまずとりかかる。観測天域については、スピッツアー宇宙望遠鏡の分光データもあり、同時に解析することで、成分に分けたダストの分布を調べる。またこれまで進めてきたあかり衛星による分光データ解析および、近傍銀河の撮像、分光データの解析を進める。特に今年度行ってきたNGC2782については、ダストモデルを用いた解析を行い、ダストのサイズ分布の変化を各構造で調べ、ダストの変成についての情報を得ると同時に他の近傍銀河へ、開発してきた整約手法を適用し、質の高いデータを作成し、それぞれの銀河中でのダストの変成についての研究を進める予定である。
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