研究課題
本年度はまずハーシェル衛星の観測で取得した竜骨座星生成領域の遠赤外線分光観測データの整約と解析を行った。得られた遠赤外線スペクトルには[OIII], [NIII], [CII], [NII], [OI], [CI]などの主要なガス輝線が高いS/Nで検出されている。これに加えて12CO, 13CO分子の高回転準位輝線も多数の領域で検出されている。このデータと同じ領域を観測したスピッツアー衛星による中間線スペクトルおよびより広い領域のあかりのサーベイデータを用い、22ミクロンにみられる特異なダストバンドの性質の解明を進めている。ハーシェル衛星のデータからこのダストバンドは予想に反し、電離領域あるいは電離波衝撃面に強く存在することが明確になった。また上記の輝線を用い、光優勢領域(PDR)モデルを用いた解析を行い、領域の電子密度、輻射場強度などの見積もりを進めている。同時にあかり衛星で観測した合体銀河NGC2782の解析を遠赤外線データもとりいれて進めている。この銀河は大きな母銀河に小さな銀河が衝突したものと解釈されているが、衝突に伴い東側に中性水素原子が引き剥がされた兆候が見られる。あかり衛星のデータはこの中性水素原子の構造と一致する有機物の輝線バンドの空間構造を明らかにした。しかし同様の構造は20ミクロン帯のデータには見られない。この結果は、バンドキャリアと考えられている有機物がやや大きめの炭素質ダストから分解して生成された可能性を示唆するものであり、さらに詳細な解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
ハーシェル衛星観測データの整約が一通り終了した。ただし一部のデータについては整約ソフトウェアの対応が不十分なところがあり、未整約であるが、解析への影響は小さい。整約されたデータには非常に高いS/Nで多くの輝線が検出されており、詳細なモデル解析が行える状況が整ってきた。一方あかり衛星のデータについては、撮像データの解析が順調に進み、ノイズを大きく低減する手法が確立できている。この手法を用いたNGC2782の解析も順調に進んでおり、7ミクロンに興味深い構造が明確に見えてきている。遠赤外線データを合わせ、銀河全体のダスト放射について、ダストモデルとの比較を始めている。ハーシェル衛星の観測が予定より遅れてデータが取得されてはいるが、全体として順調に研究は進んでいる。
竜骨座のデータについては、ハーシェル、スピッツアー、あかり衛星のデータの一時整約が終了しているが、これに地上のCO観測のデータを加えてモデル解析を進める予定で、現在データを入手しているところである。非常によいS/Nで多くの輝線が検出されているため、光優勢領域(PDR)モデルを用い、詳細な解析を行うことを予定している。この結果を用いて22ミクロン特徴的なバンドを持つダストの空間分布と物理環境の関係を明らかにする予定である。NGC2782についてはモデル解析をさらに進め、これまでの結果をまとめて論文として発表する予定である。またこの他、同様の手法を別の合体銀河にも適用することも計画している。
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