現在見られる銀河は軽い銀河が集合・合体して成長してきたと考えられている。本研究は、すばる望遠鏡次世代広視野カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) に、本補助金で製作する狭帯域フィルター NB387 (中心波長3870オングストローム。z=2.2 のライマンα線の波長に相当) を取り付けて、赤方偏移 z~2 という銀河の成長期における軽い銀河の全体像を明らかにすることを目標としていた。具体的には、HSC で約 30 平方度の天域を観測して、ライマンα輝線を目印に約 1 万 個の軽い銀河を検出し、数密度、質量、星形成率などの軽い銀河の性質とその環境依存性を調べる予定であった。NB387 は完成している。 本研究の観測は、HSC による 5 年計画の大型銀河サーベイの一環として行なわれることになっているが、HSC の稼働開始が予定より遅れた上に、しばらくは観測夜数の割当が予定より少なかったため、NB387 の観測は平成26年度中には始まらなかった。平成27年度中の開始を予定している。 本年度は、今後行なわれる本観測に備えて、既存のデータを使って、(1) 軽い銀河のダスト吸収と星形成、(2) 軽い銀河がライマンα線で強く光る原因、について研究を行ない、査読論文として発表した。前者については、軽い銀河はダスト吸収がきわめて弱いこと、吸収の波長依存性が重い銀河のそれとは異なること、軽い銀河は穏やかに星形成をしていること等を発見した。後者については、軽い銀河は、中性水素 (銀河内で発生したライマンα線を散乱し弱める効果を持つ) の柱密度が低いために、強いライマンα線を出せることを指摘した。平成25年度以前の予備研究と同様、これらの研究も、軽い銀河の性質の一端を明らかにするものである。今後の本観測によって、環境依存性をはじめとした詳細で踏み込んだ研究を行なう予定である。
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