研究課題
本研究の目的は、X線衛星「すざく」と、宇宙ステーションに搭載された全天X線監視装置MAXI という、相補的な性能をもつ2機を駆使し、ブラックホール(BH)へ降着する物質の動力学とエネルギー解放を、Low/Hard 状態に重点を置いて観測し、従来の「標準降着円盤」の描像を超えるブレークスルー得ること、また「すざく」後継機 ASTRO-H 衛星 (2015年に打ち上げ予定)に向け、硬X線イメジャー(HXI)および軟ガンマ線検出器(SGD)の開発を進めることである。本年度は最終年度として、以下の研究成果を得て、研究を完遂することができた。(1)「すざく」によるセイファート銀河 NGC3561などの観測データに、新たに開発した時間変動分光法を適用した結果、それらの一次硬X線が実は2種類の異なる成分から成ることを、世界で初めて明らかにした。これは、セイファート銀河の一次硬X線を単一成分とみなす従来の通説に、根底から見直しを迫る重要な結果である。(2) 国内の中口径望遠鏡およそ5台を組織し、「すざく」とNGC 3516を同時観測した結果、その可視光強度が、(1)で分離した2成分のうち一方のみに相関することを発見した。従来、セイファート銀河のX線と可視光の強度は、よく相関する場合も相関の悪い場合もあり、謎となっていたが、その原因がほぼ特定できた。(3) 「すざく」やMAXI により、BH新星、ULX、低質量中性子星連星などの観測結果を横通しに研究した結果、熱的コンプトン過程を解釈する新たな視点を開発し、その一環として、ULX天体のスペクトルを統一的に解釈することに成功した。ここから、ULX天体が通常のBHBより有意に大きな質量のばらつきをもつこと、従ってそれらの多くは「中質量BH」と考えられることを示した。これも本研究の大きな成果と自負する。(4) BH観測のさらなる進展を目指し、ASTRO-H 搭載 HXIおよびSGDの開発を進めた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)
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