研究課題/領域番号 |
23244030
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉田 道利 広島大学, 宇宙科学センター, 教授 (90270446)
|
研究分担者 |
川端 弘治 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (60372702)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 光赤外線天文学 / 近赤外線検出器 |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年度に製作した実験デュワ-を用いて、浜松ホトニクス社より貸与を受けた64×64画素のInGaAs近赤外検出器の冷却性能評価を前年度に引き続き行った。読み出し回路の改良を行い、低雑音化をはかった。その結果、冷却時の暗電流量が大幅に改善し、90Kでは常温に比べて20分の1まで抑えることに成功した。また、冷却による感度低下が見られないことも確認した。これらの実験結果により、本検出器は冷却することによって常温よりも低照度での性能が向上することが確認できた。これをもって64×64素子の冷却性能評価は終了した。 実験デュワ―を望遠鏡に取り付けるための治具設計、およびフィルター交換機構の設計を行った。また、比較実験のために、同じ素子(InGaAs)を用いた市販の近赤外カメラを購入し、その性能評価を開始した。 上記の実験と並行して、検出器内部の読み出しエレクトロニクス部を独自の半導体プロセスで開発することを試行した。この試作品を検出素子部に張り合わせることで、目的に応じた性能を持つハイブリッド検出器を製作することができる。そのような検出器製作の可能性についてメーカーと検討を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、平成24年度は128×128画素のInGaAs近赤外検出器の冷却性能評価に移行する予定であったが、読み出し回路の不具合により64×64画素検出器の性能評価が遅れた。また、メーカー側の開発の遅れもあり、平成24年度には128×128画素検出器の提供がなされなかった。実験デュワーは安定に動作し、その整備は予定通りに行われた。望遠鏡装着への準備も行うことができた。したがって、全体としてはやや遅れていると評価できる。 ただし、当初計画にはなかった、検出器内部の読み出しエレクトロニクスの独自開発を試みるなど、新たな展開を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
実験用の真空・冷却デュワーを改造し、天体望遠鏡に装着する可視―赤外線カメラを 製作する。このため、実験デュワ-の望遠鏡へのアタッチメント、シャッター、フィルター交換システムを製作して組み込む。 昨年度までの試験結果に基づき、浜松ホトニクス社では新規に画素サイズ20μmで128×128画素のInGaAsセンサを開発している。これのサンプルの貸与を受け、上記の実験システムに組み込んで冷却性能評価を行う。センサ読み出しには昨年度の実験で64×64画素のセンサの性能評価に用いた読み出しシステムを用い、新しいセンサは読み出しに関わるアナログ回路部分を新規製作する。128×128画素センサの冷却時における量子効率、読み出し雑音、感度一様性などを計測し、適宜メーカーに結果をフィードバックする。より大フォーマットの素子開発に向けてメーカーと協議する。 また、独自に開発した読み出しICと検出器素子を貼り合わせたハイブリッド検出器の製作可能性について具体的に協議する。年度後半には可視CCDカメラをを購入して実験デュワ―を改造した可視―赤外線カメラを製作し、広島大学のかなた望遠鏡に装着して試験観測を行う。
|