研究課題/領域番号 |
23244038
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
泉浦 秀行 国立天文台, 岡山天体物理観測所, 准教授 (00211730)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 太陽系外惑星系 / 中質量星 / 巨星 / ドップラー法 / 褐色矮星 |
研究概要 |
今年度は予定通り、188cm望遠鏡の赤経軸・赤緯軸・副鏡の駆動系と制御系、ならびに、ドームの制御系を更新した。このため、平成25年1~3月の3か月間、共同利用ユーザーならびに光赤外線天文学コミュニティからの同意を得て、共同利用観測を停止した。この更新により、188cm望遠鏡の機械系の指向精度はRMSで1秒角台に乗り、まだこれから調整に入る段階の全光学系を含めた精度でも既に10秒角を切るところまで来た。微動性能も1秒角より良く、焦点調節性能も星像位置の跳びが実用上無視できるまで小さくなった。ドームの制御性能も予定通りに向上した。これらにより観測機能の強化を進めることができた。平成25年度以降の観測自動化の推進にも確かな見通しが得られた。 一方、これまで続けて来た中質量巨星約300星の視線速度モニター観測を引き続き継続した。そのため岡山天体物理観測所188cm望遠鏡で約60夜の観測時間を獲得した(188cm望遠鏡の改修工事による3カ月の観測停止期間に伴い前年度の約80夜から一時的に減少した)。今年度は以下の結果が得られた。まず、前年度の報告書でも受理済み論文として記載したが、進化した中質量星である巨星HD100655で、これまで中質量星に見つかった中で最も軽い1.7木星質量の惑星の存在を明らかにした。さらに、同様の中質量巨星7星において褐色矮星または惑星の存在を明らかにした。そのうち、へびつかい座ニュー星では24木星質量と27木星質量を持つ二つの褐色矮星が、公転周期530日と3190日で周回していることが分かった。さらに中質量巨星HD4732では二つの惑星が360日と2732日の周期で楕円軌道を回っていることを明らかにした。この場合、ドップラー法では質量の下限を与えるのみであるが、軌道安定性の解析に基づき、初めて惑星質量の上限(28MJ)を与えることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度も、現有の観測システムをそのまま使って中質量巨星の惑星系を探索する計画であった。実際、計画通りに惑星系の探索を進めることができている。結果として褐色矮星質量や惑星質量を持つと期待される伴天体を多数検出するに至っている。従って、惑星系探索の面で研究は順調に進展しており、研究の目的も予定通りに達成されていると判断している。一方、188cm望遠鏡の駆動系と制御系の機能更新、ならびに、ドーム制御系の機能更新も無事に完了することができた。当初の計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も予定通り、これまで続けて来た中質量巨星の視線速度モニター観測を現有の観測システムで継続・拡張する。そのため年間80夜前後の観測夜数を確保する努力を続ける。Vバンドで7等級より明るいおよそ600星のG,K型巨星の精密視線速度測定を推進するため、観測時間の獲得や融通に努力する。観測時間の確保のためには、国際協力を進めることも検討する。また、188cm望遠鏡と観測装置の統合的な制御系の構築を進める。それにより段階的に観測の自動化を推進し、観測の効率化と省力化を実現して、研究の推進速度を高める。
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